天使とケサランパサランの靴屋
 疲れ果てた老人の視線と、涙で潤んだ天使の瞳が、静寂の中でその音の行く先を見つめます。

 光の挿し込む最後の扉の床の上に、小さな「物」がぽつんと置かれていました。
 二人は言葉を忘れ、ただ息をのんでそれを見つめるのでした。

 コーリャはおぼつかない足取りで、けれど天使の柔らかな支えを受けながら、ゆっくりと立ち上がりました。

 二人は身体を寄せ合い、導かれるように最後の扉へ歩み寄っていきます。

 光の向こうに佇んでいたのは――あの日壊れて、二度と音を鳴らすことのなかった、あの思い出のオルゴールでした。

 それを見つめながら、コーリャはぽつりと寂しげに呟きます。

「壊れて……この世界から消え去るのは、次はわしの番なのかもしれんの」

 彼はそう自嘲気味に息を吐き、それでも亡き妻エレーナとの愛おしい記憶に最後にもう一度触れようとするかのように、そっと、汚れた手を伸ばしました。

 その言葉を聞いた瞬間、そばかすの天使は大粒の涙を溢れさせ、激しく首を振りました。

(違う……! 違うよ……!)

 死を受け入れようとするコーリャの横顔を見て、彼女は胸を裂かれるような想いとともに、何十年もの間閉ざされていた喉を、命を削るようにして必死に振り絞ります。

「――駄目だよ……! どんな時でも……『光を探し続けろ』って、そう言ったでしょ……!」
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