天使とケサランパサランの靴屋
 トントントン。トントントン。

 静かに扉が開き、昨日と同じ、少し険しい表情をした娘のナターシャが顔を覗かせました。

「お父さん、いい加減、旅立ちの準備はできた……?」

 呆れ顔で言葉を続けようとしたナターシャは、父の見たこともないほど晴れやかな笑顔を目にして、思わず言葉を失います。

 刺々しかった彼女の声は一転して静かな驚きへと変わり、父を見つめる瞳もまた、見る見るうちに涙で潤んでいきました。

 あれほど工房に固執し、旅立つことを拒み続けていた父が――今はすっかり荷物をまとめあげ、笑って旅立ちの準備を終えていたからでした。

 ナターシャは驚きと喜びの入り混じった眼差しで、歩み寄る父を見つめます。

「お父さん……」

 コーリャはナターシャの隣に立つサーシャの前で優しく膝をつくと、夜通し心を込めて仕上げた、あの小さな靴をそっと差し出しました。

「さあ、これを履いてごらん」

 サーシャは小さな手をコーリャの肩に添え、上手にバランスを取りながら新しい靴へと足を差し込みます。

「痛くないかい?」

 コーリャが尋ねると、サーシャはピカピカの新しい靴から目を離せないまま、嬉しそうに何度も頷きました。
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