もうブチギレましたので、家出します!〜なぜか私に迫ってきた妖艶な美女は、変人引きこもりの婚約者(♂)でした!?〜
「お姉さんは優しくて、聞き上手ですし、包容力もありますし、同性としても憧れちゃいますよ。だから、みんな、好きになっちゃうんですね! 私もお姉さんに出会えてよかったです! でも、好かれすぎるのも困りますよねぇ、勉強になりましたわ……」
私の言葉に、お姉さんは呆気に取られたようにまばたきを繰り返す。そして、彼女の雰囲気がスッと変わった。
(……え?)
さっきまでとは比べ物にならないほどの色香を漂わせ、距離を詰めてくる。
「……うふふふっ、あなたって、ほーんと、可愛い」
お姉さんは妖艶な笑みを浮かべ、私の髪をその白く長い指でそっと触れる。
人を惑わすような瞳とは不釣り合いな、上品で清涼な香りが鼻を掠めた。
赤い唇が私の耳元に近づいて、少しハスキーな声で優しく囁く。
「……好きになっちゃいそう……」
(お、お、お姉さん……っ!? わ、私は……っ)
ドキドキと鼓動がうるさいくらい高鳴って、目の前がぐるぐると回る。
「わ、わた……っ、あ、あれれ……?」
お姉さんの顔がだんだんとぼやけて、瞼が重くなってくる。
意識が途切れる瞬間、お姉さんの声を聞いた気がしたが、私には聞き取れなかった。
「……おやすみ、婚約者殿」
薄く瞼を開けると、日差しが眩しい。目が慣れてくると、見慣れない天井が見えた。
「……? ここは……?」
ゆっくりと起き上がると、ズキッと頭に痛みが走る。
「――痛っ」
こめかみを抑えながら辺りを見回すと、やはり見覚えのない場所だった。
私の寝ているベッドが一つと、小さなテーブルがあるだけの、小さな部屋。
どこかの宿屋かもしれないが、どうしてここにいるのか、思い出せない。
「うーん、昨日は家出して、それで街に来て、お姉さんと出会って……あ! お姉さん! ――うっ」
大きな声を出すと、また痛みが響く。
頭を押さえていると、ベッドのサイドテーブルの上に、水の入ったグラスと一枚の紙が置いてあるのに気づいた。
『おはよう。昨夜は楽しかったわ、ありがとう。これ飲んでね、ルイ』
昨日は酔っぱらって、途中で寝てしまったようだ。お姉さんがここへ運んでくれたんだろうか。
(……お姉さんには、ご迷惑ばかりかけてしまったわ……)
お礼を言いたいのだけど、また会えるだろうか。
寝落ちする前の、お姉さんとの出来事を思い返す。
少し細められたアメジストのような瞳は、とても色っぽくて。
『……好きになっちゃいそう……』
耳元で囁かれた声が鮮明に思い出されて、顔が沸騰するように熱くなる。
「いやいやいや、あれは、きっと……ど、同性として、その、友人的な意味ですわよ! そうですわ!」
自分を納得させる。
私はグラスを取ると、一気に水を飲み干す。熱くなった顔が冷えて、頭も覚めた。
昨夜の酒場の上は、宿屋になっていたらしい。階段を降りると、昨夜のマスターがカウンターにいた。
「あぁ、お嬢ちゃん、起きたか。昨夜はだいぶ酔っていたようだが、大丈夫かい?」
「……は、はい。大丈夫ですわ……」
昨夜の失態を見られていたのが恥ずかしくて、曖昧に微笑む。
「あの、ところで、宿代はおいくらですか?」
「お代はルイ嬢からもらってるよ」
「え? お姉さんが!?」
昨夜は夕食を奢ってもらっただけでなく、宿代まで払ってもらったなんて申し訳ない。やっぱり、お姉さんに返さないといけないだろう。
「あの、お姉さん……ルイさんは、どこにいらっしゃるか分かりますか?」
私が尋ねると、マスターは首を横に振った。
「さぁな。俺が知ってんのは名前だけさ。他は何を聞いてもはぐらかされるんだよな」
(え……、そんな……っ)
私の言葉に、お姉さんは呆気に取られたようにまばたきを繰り返す。そして、彼女の雰囲気がスッと変わった。
(……え?)
さっきまでとは比べ物にならないほどの色香を漂わせ、距離を詰めてくる。
「……うふふふっ、あなたって、ほーんと、可愛い」
お姉さんは妖艶な笑みを浮かべ、私の髪をその白く長い指でそっと触れる。
人を惑わすような瞳とは不釣り合いな、上品で清涼な香りが鼻を掠めた。
赤い唇が私の耳元に近づいて、少しハスキーな声で優しく囁く。
「……好きになっちゃいそう……」
(お、お、お姉さん……っ!? わ、私は……っ)
ドキドキと鼓動がうるさいくらい高鳴って、目の前がぐるぐると回る。
「わ、わた……っ、あ、あれれ……?」
お姉さんの顔がだんだんとぼやけて、瞼が重くなってくる。
意識が途切れる瞬間、お姉さんの声を聞いた気がしたが、私には聞き取れなかった。
「……おやすみ、婚約者殿」
薄く瞼を開けると、日差しが眩しい。目が慣れてくると、見慣れない天井が見えた。
「……? ここは……?」
ゆっくりと起き上がると、ズキッと頭に痛みが走る。
「――痛っ」
こめかみを抑えながら辺りを見回すと、やはり見覚えのない場所だった。
私の寝ているベッドが一つと、小さなテーブルがあるだけの、小さな部屋。
どこかの宿屋かもしれないが、どうしてここにいるのか、思い出せない。
「うーん、昨日は家出して、それで街に来て、お姉さんと出会って……あ! お姉さん! ――うっ」
大きな声を出すと、また痛みが響く。
頭を押さえていると、ベッドのサイドテーブルの上に、水の入ったグラスと一枚の紙が置いてあるのに気づいた。
『おはよう。昨夜は楽しかったわ、ありがとう。これ飲んでね、ルイ』
昨日は酔っぱらって、途中で寝てしまったようだ。お姉さんがここへ運んでくれたんだろうか。
(……お姉さんには、ご迷惑ばかりかけてしまったわ……)
お礼を言いたいのだけど、また会えるだろうか。
寝落ちする前の、お姉さんとの出来事を思い返す。
少し細められたアメジストのような瞳は、とても色っぽくて。
『……好きになっちゃいそう……』
耳元で囁かれた声が鮮明に思い出されて、顔が沸騰するように熱くなる。
「いやいやいや、あれは、きっと……ど、同性として、その、友人的な意味ですわよ! そうですわ!」
自分を納得させる。
私はグラスを取ると、一気に水を飲み干す。熱くなった顔が冷えて、頭も覚めた。
昨夜の酒場の上は、宿屋になっていたらしい。階段を降りると、昨夜のマスターがカウンターにいた。
「あぁ、お嬢ちゃん、起きたか。昨夜はだいぶ酔っていたようだが、大丈夫かい?」
「……は、はい。大丈夫ですわ……」
昨夜の失態を見られていたのが恥ずかしくて、曖昧に微笑む。
「あの、ところで、宿代はおいくらですか?」
「お代はルイ嬢からもらってるよ」
「え? お姉さんが!?」
昨夜は夕食を奢ってもらっただけでなく、宿代まで払ってもらったなんて申し訳ない。やっぱり、お姉さんに返さないといけないだろう。
「あの、お姉さん……ルイさんは、どこにいらっしゃるか分かりますか?」
私が尋ねると、マスターは首を横に振った。
「さぁな。俺が知ってんのは名前だけさ。他は何を聞いてもはぐらかされるんだよな」
(え……、そんな……っ)