完璧な三神くんは、愛だけがわからない。
ーー
「あったあった。帰ろ」
教室に戻り、お気に入りの花柄の水筒を手にすると、近くから物音がするのに気がつく。隣の空き教室だ。
いつもは施錠してあるはずの空き教室からは、何やら怪しげな空気が漂っていて、薄気味悪い。
……怖い。引き返す?
いやここで引き返しても、結局家に帰ってから気になるだけだから行こう。
「……」
そっと、空き教室の扉を開けると、ひとつの椅子に寄り添うように座る男女の姿が目に入った。
「っ」
互いの距離は近く、こちらに気づくことなく、夢中で唇を重ねている。
「‥‥んっ、、あ」
静かな教室に、かすかな吐息と、衣類の擦れる音だけが響いていた。
私は思わず息を呑み、その場から動けない。
見てはいけないものを見ていることに気が付いた私は、そっと扉を閉めようとした。