リフォーム営業マンの小さなドキドキ短編集 エピソード2

エピソード2『段々綺麗になっていく③』

あるメーカーの◯◯エリアのショールームへ行くため、最寄り駅で奥様と待ち合わせをした。

約束の時間10分前。

ロータリーに車を停め、北口改札の階段下で待っていた。

約束していた電車の時間。

ホームに電車が滑り込んでくる。

少しの緊張感とともに、俺は奥様が降りてくるのを待っていた。

そして――

階段を降り始めた奥様を、俺が先に見つけた。

「ここですよ」

そう言いながら手を上げる。

……いや。

少し、見つめていた。

こんな格好するんだ。

薄いベージュのノースリーブのニットワンピース。

足元にはスリットが入っている。

階段を降りてくるたびに、ローヒールのサンダルが

カツ、カツ……

と小さく音を響かせる。

いつも下ろしているセミロングの髪は、今日は一つにまとめたポニーテール。

「お待たせしましたっ」

そう言って笑った顔が、いつもより少しだけ違って見えた。

なんだろう。

少し……妖艶に見える。

デート気分になりそうな自分を、俺はグッと抑えた。

「じゃあ、行きましょうか」

車まで案内し、助手席のドアを開ける。

「ありがとうございます」

奥様が少し驚いたように笑う。

そして、

「あっ……何十年ぶりかな」

「何がです?」

「助手席、開けてもらったの」

そう言いながら、シートに腰を下ろした。

俺も何となく照れくさくなりながら、運転席へ回る。

ドアを開けた瞬間――

ふわっと、優しい香水の香りがした。

……なんか、イメージと違うな。

いつもの主婦としての吉岡さんじゃない。

そこにいたのは、

一人の女性だった。

そんなことを考えながら、俺は車を走らせた。

ショールームでは、思いのほか話がスムーズに進んだ。

商品の確認をして、仕様を決めて、見積もりの依頼まで済ませる。

ショールームは基本的に10時からの90分、もしくは120分制。

二時間ほどの打ち合わせを終えた頃には、午後12時を少し回っていた。

「もしご迷惑じゃなければ……」

俺は少し考えてから声をかけた。

「お昼がてら、ファミレスで少し打ち合わせしてから帰りませんか?」

そして、

「帰りも送りますよ」

「ちょうどお腹空いてたし……嬉しい提案です」

奥様は、そう言って笑った。

「ありがとうございます」

吉岡さんは、俺の提案を快く受け入れてくれた。
< 3 / 4 >

この作品をシェア

pagetop