隣の席の佐竹くんには…
♦︎佐竹side♦︎


驚きを隠せないまま、走り去っていく梅沢さんの後ろ姿を見ることしかできなかった。

桜井さんがニコッと笑みを向ける。

「前にもね、こんなことあったの。あの子達が佐竹君のこと悪く言ってて。佐竹君のこと知ろうともしないのにって、梅すごい怒ってた。さっきも悔しい気持ちが暴走しちゃったんだと思う」

自分のことじゃないのに…
どうしてそこまで怒ってくれるんだろう。

(自分のことも大事に考えて…か…)

複雑なこの思いを上手く言葉にすることはできないけれど、心の中に熱を帯びた何かの感覚があるのはわかる。

(……オレはー…)

チャイムが鳴ると、桜井さんは再び笑みを見せてから、梅沢さんを追いかけるように走っていった。


桜井さんの姿が見えなくなったところで、ライトがその場に座り込み、つられるように隣へ座った。

「…昨日、梅沢には知っておいてほしいと思って、あのこと話した」

“あのこと”に、体が反応する。

「…そう、か」

思い出すと後悔の気持ちが蘇る。

「梅沢さん、呆れてた?」

「いや、むしろ謝られた。無神経なこと聞いて悪かったって。罪悪感丸出しで、めちゃくちゃへこんでた」

「はは…。なんで梅沢さんが罪悪感感じるんだろうな。不思議な人」

何考えてるか読めないのに、放つ言葉には色んな表情がある。

人に興味がなさそうなのに、ちゃんと見てくれている。




…——過去のあの出来事から、自分の感情を言葉にするのが怖くなった。

自分の中にある感情が、人を傷つける原因になるんだったら、言わなければいい。

気づいたら、それが癖になり、当たり前になっていた。

それがこんなにも周りの人に影響するなんて思ってもみなかった。


「ライト、今までごめん」
「謝んなよ」

ずっと消えずにいた黒いモヤのようなものが、少しだけ薄れていく。




「ねぇ、ライトに頼みたいことがあるんだけど——…」



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