隣の席の佐竹くんには…
「オレ、梅沢さんのことで一つ思ったことがあるんだ」

「…なに?」

「言葉に表情があるなーって。それって、すごく良いよね」


…そんなこと言われたのは初めてだ。


ふと、過去の記憶が蘇る。


『梅ちゃん、本当は私と遊んでて楽しくないんでしょ?』

小学生の頃、仲が良かった友達の言葉。

『楽しいよ』と伝えた。
けど…

『いつも反応が微妙なんだもん。顔もつまらないって言ってるみたい』

何度も伝えたけど信じてもらえなかった。

『私、梅ちゃんといても、つまらない』

『…そっか』


それから私は、“そういう人間”だと自分に言い聞かせるようになった。

だから仕方ない、と。

そう思っていた方が楽だったから。

それでも、七恵という理解してくれる友達ができて、少しずつ心の扉が緩んできて。

そして、佐竹君の言葉で扉が開いた感覚を体で感じた。


“私にもちゃんと感情はある“

それをちゃんとわかってくれる人がいる。


もしかしたら、また、扉が閉じてしまうこともあるかもしれない。

でも、それは“そういうこともある”と、自分の過去のものとして受け入れる。

そうやって、少しずつ、成長できたら良いなと思えた。


「ありがとう」

自然と出た言葉に、素直に出た笑顔。

その反応に佐竹君は、少し驚いた顔を見せてから笑った。

図書室で佐竹君の笑った姿を見た時、どんな顔で笑うんだろうと気になっていた。


…あぁ、そっか。

その時から育っていたのかもしれない。



好きって気持ちが。

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