隣の席の佐竹くんには…
「ねぇ、先輩の名前教えて」

「え…と、梅沢 雅…です」

「みやび先輩かぁー!よろしくね、ミャーちゃん」

ミャーちゃんて…。

距離の縮め方が早すぎて、土屋君のペースに飲み込まれる。

「土屋君たら、すっかり先輩のこと気に入ったんですね」

「どストライクって感じ?明日の試合打てそうかも!」

「土屋君はバスケでしょ。まぁ、二人ともお似合いそうですし…いいかもしれませんね」

ふふふ、と楽しそうに笑う松野さん。

松野、それ以上余計なこと言うな!

「え!マジ!?オレ、ミャーちゃんにマジになっちゃおうかなー」

「でしたら私、全力で土屋君を応援します!」

土屋君は松野さんの言葉にテンションが上がりきった。

そして、今度は追い打ちをかけるかのように、

「…ねぇ、マジになってもいいよね?」

と、キメ顔を近づけてくる。

「お近づきの印に」と、持っていた袋から缶ジュースを一本、一輪の花を渡すかのように差し出してきた。

…む、ムリ!
この人のテンションについていけない。

「ダメ」

そうそう、ダメに決まってんでしょう!



………あれ?

私、今、言葉にした?

してない…。

わけがわからずにいるのもつかの間、気づけば佐竹君に手首を引かれていた。

「梅沢さんにマジにならないで」

…え?

空耳?


唖然としてるのにも構わず、佐竹君はさらに手首を引き背を向けて歩きだす。

「さ、佐竹さんっ!」

後ろから松野さんの声が聞こえた。

けど、佐竹君はそれに答えず足を止めようともしない。

どうしたっていうの?

今、なにが起きてるの?


…わけがわからない。

わからなすぎて心臓の早く打つ鼓動の意味が理解できない。

後ろに目をやると、呆気にとられる松野さんと、何故か目をキラキラと輝かせた土屋君が見えた。

二人の姿はどんどん小さくなっていくだけだった。
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