隣の席の佐竹くんには…
「松野さんどうしたの?」

その問いに、松野さんは遠慮がちに近づいてくる。

「あっ…あのですね…先ほど、なんだか不穏そうな光景を目にしまして…」

そこまで言って、松野さんはチラチラと周りを気にする素振りを見せてから、少し顔を寄せてくると、小さい声で話す。

「不機嫌な女子たちの集団を見かけて…。その中に、おそらくなんですが…前に剣道場にきた先輩がいたような気がしまして…」

剣道場にきた人…
それって……

「梅沢さん?それとも桜井さん?」

「えと、サラッとした茶髪の先輩のほうです」

…桜井さんだ。

ライトの体がピクリと動く。

「あっ、でも…不穏な光景っていうのは、私の勘違いかもしれないのですが…」

「いや、勘違いじゃないかも」

松野さんの言葉に続いて、杉本が言った。

ライトの表情が厳しくなった。

「どういうことだよ?」

「さっき保健室から帰る途中に、桜井と女子数人の塊が歩いてんの見てさ。珍しい組み合わせだなーとは思ってたんだよね。それ、さっき言おうとしてた」

「なんで、早く言わねんだよ…」

ライトは、イラついた様子で杉本を射抜く。

「な、なんか…ごめん」とたじろぐ杉本。

「それ…どこらへんで見た?」

冷静な声でライトが松野さんに尋ねると、彼女はオドオドした様子で答える。

「第二校舎の方へ歩いて行ったと…思います」

その言葉を聞くと、ライトは列を飛び出して行った。
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