隣の席の佐竹くんには…
ホント、ヤダ。
まだ伝えるつもりなかったのに。
どうせなら、もっと青春ぽいベタなシチュエーションがよかったのに。
「ちょっと待って!」
「っ…!」
階段の踊場のところで、ライト君に手首を掴まれた。
「逃げないで…桜井…」
息を切らすライトを背中で感じるけど、振り向くことができない。
恥ずかしさと不安が入り混じり、すぐに言葉が出てこなかった。
掴まれた手首から、ライト君の熱が伝わってくる。
振り解きたいのに、できない。
「さっき…あいつらに責められて嫌な思いしてたんじゃないの?…オレとミツのことで」
「えっ…」
その言葉に、思わず振り向いた。
「…さっき、全部聞いてたの…?」
「やっぱりか…。噂のことは…実は、昨日偶然聞いて知ってた」
「……そう…なんだ」
なんだ…
既に知ってたんだ…。
焦ったところで遅かったんじゃん…
そう思った途端、諦めのような気持ちが、体の強張りを緩めた。