隣の席の佐竹くんには…
教室へ入ると、すぐに隣の席の人物を視界に入れる。

「…おはよう、佐竹君」

表情はいつも通りを装って。

でも、努めて明るく佐竹君に声をかけた。

「おはよう」

佐竹君は、貼り付けたような笑みを浮かべて答えた。

一瞬、なにか言いたそうに口を動かしたけど、すぐに口を結ぶ。


…うん、気にしない。

(昨日の感じだと、おそらく松野さんは嫉妬深いんだろうな…)

きっと、女の子とは話さないでほしいとか、そんなことを佐竹君に頼んだのかもしれない。

(佐竹君…そういうの、守りそうだし。だから、素っ気ないのかも)

…なんて、自分に都合の良いような解釈をして、精神を安定させる。


「梅、おはよう。…あれ?なんか目腫れてない?」

「…昨日、借りてきた映画で号泣しちゃって」

「えー、そんな感動的だったんだ?今度教えて」

「いいよ」

思い出したら、また泣いてしまいそうだったから、嘘をついた。


「…あ、ねぇ。こういう時ってメイクで隠せたりするの?」

「できるよー。また可愛くしてあげよっか?」

「ふふ、お願いしようかなー」

頭の片隅で七恵に罪悪感を抱きながらも、普段通りの無表情を装った。
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