隣の席の佐竹くんには…
♦︎佐竹side♦︎



次の体育の授業。

……バコン!!

バレーボールがオレの頭に直撃した。

当たった部分に手をやって、無言でその場にうずくまる。

「おい、ミツ。ちょっと端で休め」

ライトに無理矢理コートから引っ張り出されると、ステージ付近に座らされた。

「最近のお前おかしいよ。なにかあったのか?」

「…別にないよ。強いて言えば、剣道の練習がうまくいかないことかな。ライバル校との試合が近いから、ちょっと気持ち的に疲れてるかも」

「……そうか」

咄嗟に誤魔化した。

練習が上手くいっていないことも本当だけど。

それよりも、体の中で目まぐるしく動いてる色々な感情が、思考を鈍らせている。


(…梅沢さんの目、腫れてたな…)

気づいたのに、気になったのに、聞けなかった。

…前みたいに、梅沢さんと何気ない話がしたい。

だけど、それをしてしまうと、気持ちが揺れて、油断してしまいそうになる。


購買で会った時もそうだった。

俯き加減になった梅沢さんに、思わず反応してしまった。

松野さんには、絶対バレないようにしないといけないのに…。

隠そうと思えば思うほど、なにかが削れていく気がする。

梅沢さんのこと、考えないようにしなきゃいけないのに…

そうしないといけないのに…。

だけど…
もう一つの感情がその思考の邪魔をする。

(…土屋、梅沢さんと距離近くなってたな)

あの後、二人でお昼休みを過ごしたのか?

梅沢さんは、土屋のこと何とも思ってないって言ってたのに…。

でもあの時、一瞬…梅沢さんが土屋にホッとしてるように見えた。

あの表情を見た瞬間、黒いドロドロとしたものが体の奥底から湧き出てくるようだった。

嫉妬で、どうにかなりそうだった。


その場から無理に離れても、その感情は消えなかった。
< 238 / 319 >

この作品をシェア

pagetop