隣の席の佐竹くんには…
(結局、なにも変わってない…)
だけど…
(巻き込みたくない…)
その思いが、まだ強く残っている。
(これはオレの問題だから…)
でも、ライトの真っ直ぐな目を見ていると、それがただの意地に思えてきた。
「……」
「言いたくないなら、今は無理に言わなくていい」
ライトは、少し声を和らげた。
「でも、限界来たら、ちゃんと言えよ。それだけは約束して」
「……わかった」
小さく頷くと、ライトはようやくホッとしたような表情を見せた。
「先生が迎え頼んで、これから秀夜さんが来てくれるってさ」
「え…よりによって、ねぇちゃん?あの人、運転荒いから嫌なんだよなぁ…」
「はは!ちょうどいいんじゃん?」
軽口を交わしたら、心の奥が少しだけ軽くなった気がした。
「じゃあオレ、生徒会でまだやることあるから戻るわ。秀夜さん来るまで、少し寝てろよ」
「うん」
ライトの足音が遠ざかり、部屋に静寂が戻る。
窓から差し込む陽光が、白いシーツの上で微粒子となって踊っている。
松野さんの視線もない。
この静けさ。
この、誰にも干渉されない無機質な空間。
この保健室の匂いを吸い込んだ瞬間、なぜか心臓が少しだけ楽になるのを感じた。