隣の席の佐竹くんには…
♦︎佐竹side♦︎



表情をあまり変えず、杉本に突っかかる梅沢さんに思わず笑ってしまった。


…久しぶりに笑えた。

それだけだったけど、自分の中にある錘が浮いてくるように体が軽くなった気がした。

(…やっぱり、いいな)

何気ない会話で盛り上がる時間が好きだったことを、思い出す。

その時間は、偽ることもなく、ただ、自分の感情のままに空気が吸えた。

梅沢さんとの、この空間は絶対に壊したくない。

今、この空間には松野さんはいない。

なら、この場所だけは偽らなくてもいいんじゃないか?

松野さんの前でボロが出ないようにと必死にやっていた行動は、結局、自分を縛っているだけだった。

(壊したくないとかいって、壊してたのは自分だったんだ…)

自嘲気味に笑いがこぼれた。

(気づくの遅すぎだろ…)

それでも、松野さんの前でまだ油断はできないけど。

この空間だけは、ありのままの自分でいたい。


(意識を変えるだけで、こんなにも違うんだな…)

それに気づいてからは、以前と比べて松野さんと過ごす時間を苦痛に感じることはなくなってきた。

気を許したわけじゃない。

どうでも良くなってきたって感覚が正しいかもしれない。

自分には、自分らしくいられる空間がある。

ピンチの時には、助けてくれる友達もいる。

そう認識してから、ずいぶん心が軽くなっていった。

< 257 / 327 >

この作品をシェア

pagetop