隣の席の佐竹くんには…
「お兄さん、これ見てください」

そう言って、男子が足元を指さした。

見ると、先ほど男子が落としてしまったペットボトルが、すでに中身がほぼ入ってない状態になって落ちている。

「これ、今のお兄さんの状態を具現化したものです」

「……うん?」

どういうこと?

意味がわからなくて、目が点になる。

「お兄さんをジュースに例えるなら、彼女はお兄さんのジュースをジワジワと飲み干そうとしてるんです」

「……」

「全部飲まれるくらいなら、自分で飲み干したほうがマシって思っても、お兄さんはそれができない。そのジュースは毒に侵されているから」

「……」

「そんな毒入りジュースなんか大事にしなくていい。お兄さんはそれに気づいて、残っていた中身をぶちまけたんです」

「……うん」

「それでも彼女は、周りにこぼれたものだとしても、必死に飲みに来るでしょうけど。でも、お兄さんにはもう害はないわけだし、そのまま勝手に飲ませておけばいいんですよ」

「たしかに…」

「こぼれた液体も、いつか消えてなくなります」

男子は足元のペットボトルを拾うと、それを見せてきた。

「今、お兄さんの容器は空になったんで、今度はここに好きな人で満たしていってください」

…それは、今、一番したいこと。

空っぽになった今の状態だから、それができるということだ。
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