隣の席の佐竹くんには…
第21章 一歩と、一手
杉本君と石川さんが抜けた放課後、佐竹君と二人だけで看板作りを進めていく。
広げた大きな紙の前に二人で座り込み、それぞれ筆を持つ。
「ここの文字、もう少し太めに塗った方がいいかな?」
その言葉に、佐竹君は看板から少し離れたところに立つ。
「…たしかに。遠目で見ると、ちょっと目立たないかもね」
言葉のキャッチボールが、自然と続いていく。
気づけば、以前と変わらない空気が、二人の間に戻っていた。
お互い集中して静まる時間もあるけれど、その時間に流れる空気でさえ、とても穏やかなものだった。
筆を動かす佐竹君の姿を、横目で盗み見する。
(…やっぱり、好きだなぁ)
二人だけの作業でドキドキするけど、その感覚が体を満たしてくれる。
この時間が続けばいいのに。
筆を持つ手を止めて、そんなことをぼんやり考えていた時、パチリと佐竹君と目が合った。
「どうしたの?」
「あ…っと、ちょっとぼんやりしてた」
「休憩する?」
「ううん。大丈夫」
胸の高鳴りに気づかれないように、視線を看板へ落とし、再び筆を動かす。
前へ落ちてくるサイドの髪をかき分ける。
「あ!梅沢さん」
慌てたような声で呼ばれて顔を上げると、佐竹君が自分の左頬を指さしている。
「絵の具付いた」
「え、うそ」
慌てて指定された箇所を手で撫でる。