隣の席の佐竹くんには…


着いた絵の具を洗い落とし、佐竹君と教室に戻る。

中へ入るなり、なんとなく空気感が変わっているような気がした。

小首を傾げながらも看板の前に座り込むと、別班で作業中の七恵とパチリと目があう。

顔がニンマリとしている。

その表情の意味を察して、思わず顔が緩んだ。

あの顔…絶対、さっきの佐竹君とのやりとりにニヤついてるんだな…。

七恵だけじゃなく、木内さん始め、他数人からも、なんとなくだけど感じる。

…なんか、やりづらいんだけど。

今度は、カァ…っと、顔が熱くなる。

やっぱり、図太く行動するのって難しいな…。


「今日はこの部分だけ仕上げたら終わりにする?」

教室の空気感に気づいていない佐竹君が、不意に聞いてきて、思わずドキッとしてしまう。

「う、ん。そうだね…」

急に意識し始めたら、図太さの加減がわからなくなってきた。

佐竹君は、そんなぎこちなさを感じとったらしく、

「ん?どうしたの?」

そう言って、顔を覗き込んでくる。

や、やめてくれ!

そんな時、

「佐竹さんいますか?」

松野さんが教室のドアからヒョコッと顔を出した。

途端に空気が重く沈んだ。

佐竹君は私の顔を覗き込む体勢のまま、松野さんに視線だけを合わせる。

その姿に、松野さんの目の色が変わった。

「えっ…何してるんですか?」

松野さんの視線は、佐竹君ではなく、そのすぐ隣にいる私へとゆっくり滑ってきた。
< 269 / 335 >

この作品をシェア

pagetop