隣の席の佐竹くんには…
「何って看板作りしてるんだよ」
「そ、それは、そうなんですけど…っ」
なんとなく冷たさを感じる佐竹君の声に、松野さんはたじろぎながら、もう一度、こっちに視線だけを向けてくる。
なにか言いたそうだけど、この場に複数人の目があるためか、松野さんは口をギュッと結ぶ。
「私のクラスはもう終わったので、帰りましょう」
気を取り直すように松野さんが言う。
「オレはまだ帰れないから。今日は先に帰ってて」
「あ、じゃあ…私、佐竹さんが終わるまで図書室で待ってます」
「待たなくていいよ。あとどれくらいで終わるかわからないし」
「私は大丈夫ですから、気にしないでください」
ニコッと微笑みかける松野さんに、佐竹君は、軽く息をつく。
「オレが気にするんだよ。だから、今日は帰ってほしい」
「っ……」
グッと、言葉を飲み込む松野さん。
彼女に向ける佐竹君の表情は、これまで見たことのない、貼り付けたような笑みで、そこに“佐竹本人”はいなかった。
(佐竹君…?)
瞳の奥に色がない…。
ピリつく空気感。
それでも、松野さんは次の一手を探しているようだった。
そんな中、はぁ…と、木内さんがため息をついた。
「彼女さんさぁ、彼氏が帰ってって言ってるんだから、帰ったらいいんじゃないの?」
「てか、この空気見たら、まだ終わってないってわかるでしょ?」
図太さ上位ランク級の女子たちが、強めの口調で松野さんを仕留めにかかる。
教室を見渡すと、誰もが松野さんに冷めた視線を向けている。