隣の席の佐竹くんには…
□土屋side□


ミャーちゃん、良い顔してるなぁ…。

先輩四人が楽しそうに赤い絵の具を垂らしてるという異常な光景。

ある意味恐怖映像だけど、楽しそうに作業する先輩たちを見ていたら、つられて笑ってしまった。



…ミャーちゃんが泣いていたあの日。

『…土屋君。ありがとう。後で、なにかお礼するね』

そう言われたけど、本当はお礼なんていらなかった。

だけど、欲が出た。

『じゃあ、オレのことテルって呼んでほしいな』

『え…。それ、お礼になってないよ』

『オレからしたらご褒美だよ!』

下の名前を呼ばせることで、少しでもミャーちゃんとの距離を近くで感じたいと思って、無理矢理お願いした。

(この人を笑わせてあげたいな)

あの時、そう思った。


だけど……


(その役目、オレじゃないかもな…)

佐竹先輩に見せるミャーちゃんの顔を見たら、そう思ってしまった。

…なんとなくわかってはいたことだけど。

(ミャーちゃんは、やっぱり佐竹先輩が好きなんだな)

購買で会った時、なんとなく感じたこと。
そして、松野ちゃんと別れた後に、ミャーちゃんが泣き崩れていた姿を見て、推測できてしまった。

それが今、目の前の光景で証明されてしまった。

(…だとしても、オレは、まだ引かないけどね)

チラリと佐竹先輩だけに視線を当てる。

ミャーちゃんに向ける優しい笑顔。

(佐竹先輩、良い顔してんなぁ…)

そう心の中で呟いて苦笑する。


「ねーねー!先輩、オレも血垂らしやっても良い?楽しそう!」

「おー!やれやれー!」

楽しげに答えてくれた杉本先輩に、看板のところまで近づくと、

「…はい」

少し複雑そうな表情を浮かべる佐竹先輩が、筆を差し出してきた。

意外な行動に、ほんの一瞬、反応できなかった。

「ありがとうございます!佐竹先輩!」

ニッと笑って受け取った。

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