隣の席の佐竹くんには…
「それは…どうして?」
「っ…」

困ったように、キュッと佐竹君の口が結ばれる。

一番、その先が知りたいことなのに…。

肝心なことは言ってくれないんだ。

(…本当に、ずるいな)

だけど、嫌じゃない。

(少しだけ、期待してもいいの…?)

そう思っていいのなら、これまでの佐竹君の言動は、全て逆の意味で捉えられてしまう。


…もし。

本当に、佐竹君の中に、なにか特別な感情を抱いてくれているのだとしたら…


今、それを佐竹君から引き出してしまうと、タブーになる。


佐竹には松野さんという彼女がいるんだから…。

「……」
「……」

少しの沈黙の後、あっ!と、わざとらしい声を出す。

「もしかして、テルが変態かもって心配してくれてる?前に佐竹君、言ってたもんね」

「え…あー…」

「テルは大丈夫だよ。ただ、テンション高いってだけ」

「そっ、か…」

「うん。だから、心配しなくて大丈夫だよ」

ニコッと笑みを作り、手を動かす。

佐竹君もそれ以上は何も言わずに、片付けを始めた。


…困らせたい。

でも、困らせた先で、嫌われるのが怖い。


結局、図太い女にはなれそうになかった。

< 280 / 335 >

この作品をシェア

pagetop