隣の席の佐竹くんには…
一人がパンケーキにチョコソースをかけながら、ポツリと言う。
「…佐竹先輩って、本当に松野さんのこと好きだと思う?」
「松野さんと付き合ってるって話が広まってから、佐竹先輩なんか雰囲気変わった気がするよね」
「そういえば、部活の先輩が話してたんだけど…この前ヤバかったらしいよ」
「なになに?」
「作業が終わらないから先に帰っててって佐竹先輩が言ってるのに、松野さんが従わなくて…それで、すっごい微妙な空気になってたらしい。あれは、もう終わってるって先輩言ってた」
「マジ?」
段々と、女子たちの声のトーンが落ち始める。
「思ったんだけど…、松野さん自身が彼女だって宣言したって言ってたっけ?」
「たしか、そう聞いた気がする」
「でもさ…、最初は“佐竹先輩の彼女が誰なのか知ってるけど、言えない”みたいなこと言ってたじゃん?」
「言ってたね。それなのに結局、自分で宣言するとか、意味わかんなくない?あのまま、内緒にしてればいいのにさ」
女子たちの会話が、途中で止まる。
「……あの二人、そもそも本当に付き合ってんのかなー…?」
そのつぶやきが、店内の賑やかな空気に溶け込む。
水面に広がる波紋のように、小さな違和感が静かに広がり始めるようだった。
けれど——
松野は、その視線の変化に一度も気づかないまま、くるりとスカートを揺らして笑っていた。