隣の席の佐竹くんには…
「楽しんでるよー!」

七恵が、間髪入れずに答える。
少しだけ強めの口調。

「梅沢先輩はどうですか?文化祭、満喫できていますか?」

ターゲットを絞ったような問いかけ。

松野さんの視線が、まっすぐ向けられる。

逃げ場を作らないような、穏やかな圧に、ほんの一瞬だけ間を置いてから軽く笑った。

「うん。楽しいよ」

それだけを、さらりと返す。

「そうですか。よかったです」

松野さんは満足そうにうなずくと、今度は七恵に視線を向ける。

「桜井先輩は、響先輩と周らないんですか?」

「えっ…。周る、けど…」

松野さんの急な攻撃に、一瞬、怯む七恵。

「やっぱ、ですよね!私も明日、佐竹さんと周るんですよ!」

《《佐竹さんと周る》》を強調して言う松野さんに、空気がわずかに止まる。


…そう言うことね。

急に、七恵に話題を振った理由。

「お互い楽しみましょうねー!」
「あー…うん。そうだねー」

七恵が、顔を引きつけながら、低く相槌を打つ。

松野さんは、スイッと流れるように、こっちに視線を向けてくると、ニコッと微笑む。


…この子、本当にすごい。

(こういうのを図太いっていうのかもな…)

あまりにもストレートに攻撃してくるものだから、感心した気持ちになってしまった。

微笑む松野さんに、軽く笑みを作る。

「楽しんで来てね」

…ほんの一瞬だけ、言葉の奥に何かが引っかかった。

けれど、それを拾う前に、松野さんは満足そうに微笑んだ。

「では、楽しんでくださいね」

そう言って、松野さんは綺麗な作法でお辞儀すると、その場を離れていった。

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