隣の席の佐竹くんには…
松野さんが離れた途端、さっきまで息を吸い込んでいなかったかのように、思い切り七恵が空気を吸い込む。

「…っなにあの態度!?すんごい腹立つんだけど!」

声のボリュームは抑えつつ、息と共に怒りを吐き出した。

「なんか梅に対して牽制してなかった?もしかして…梅の気持ち知ってるの?」

「うん。前に、聞かれた時に話した」

「えっ!?そうなの?聞いてないよ!」

「言ってないもん」

もーっ!と、七恵は頭を抱える。

「ごめん。なにも考えずにここ入っちゃって…」

「大丈夫だよ。ここまであからさまに敵視されてると、逆に面白いよ」

別のお客の対応をしている松野さんを、チラッと横目で見る。

明日、一緒に周るのかぁ…。

きっと、佐竹君と一緒にお化け屋敷入るんだろうな。

私が仕掛け役の時に限って、お客として来そう…。

と、いうかわざと来そうな気がする。

今の感じだとありえる。

そうしたら、また、アピールしてくるんだろうな…。

(…はぁ、余計なこと考えるのやめよう)

って、思ったけど…

「なんか、あの子だけ一人だけ衣装違くない?」

同じことに気づいた七恵が不快そうな顔で言った。

「うん。他の子より派手だよね。ヒロイン役なのかな?」

「このクラスのヒロインは私!的な?うへぇー…」

お姫様というより、地下アイドルの方が近いイメージだ。

もしかして…佐竹君に見せるため?


……はっ!!

そういえば佐竹って…


ロリ好きじゃん……!!

いつかのグラビア論争が、鮮明に蘇ってきた。

今、松野さんの格好がまさにそれだった。

(佐竹君…松野さんにときめいたら嫌だな…)


…ダメだ。

この空間にいると、余計なこと考えちゃう…。


松野さんのテリトリーは毒が回ってくるようだった。
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