隣の席の佐竹くんには…


交代の時間が近づいたため、七恵と控室に戻る。

すると、窓のところに寄りかかって、お化け衣装のままグッタリしている佐竹君が目に止まった。

「佐竹君どうしたの?」

ドアのところで立っていたライトに尋ねる。

「ここぞとばかりに、女子の客に囲まれて疲れたらしい。リアルにお化けになりそう…って、嘆いてたから休ませてる」

「はは…」

窓から入ってくる風が、佐竹君の長い髪をなびかせている。


その姿に、前髪が長かった時の佐竹君を思い出す。

(あの時と、本当に周りの環境が変わったなぁ…)

隣の席が突然、小林君から佐竹君に替わっていた時、正直どうでもよかった。

前の席じゃなければそれでいいとしか思ってなかったから。

だけど今は、佐竹君と隣同士の席になれて良かったと思ってるし、それ以上の関係を求めたいって思ってしまう。

(…あぁ、ダメだなぁ…)

胸の奥に熱いものがジワッと滲み出てくるような感覚に、目頭が熱くなった。

そんな中、

「…あっ、ねぇ!次、この看板持って校内周ってきてくれない?」

ちょうど控室に戻ってきた宣伝係の男子に抜擢されて、浸りそうだった感情が引っ込んだ。

「えー…私?苦手なんだけどな…」

「梅沢さんなら、その素材だけで冷ややかなオーラ出せそうだし、雰囲気出そうじゃん?」

失礼じゃない?
せめて呪縛メイクでもさせてほしい。

男子に看板を押し付けられ、ため息をつきながら教室を出ようとすると、

「梅沢さん」

突然、佐竹君に呼び止められた。

さっきまでグッタリしていた様子から、すっかり復活した様子で、こっちに向かってきた。
< 294 / 342 >

この作品をシェア

pagetop