隣の席の佐竹くんには…
図書室を出ると、文化祭の喧騒が一気に戻ってきた。

さっきまでの空気との落差で、妙に落ち着かない。

急に恥ずかしさが込み上げてきて、隣を歩く佐竹を無駄に意識してしまう。

(あれ…?これまで佐竹君とどうやって接してたっけ?)

足元もどこかふわふわしていて、自分の体じゃないみたいだ。

ヤバい。
平衡感覚おかしくなってる。

そっと隣に視線を向けた瞬間、ぱちっと目が合った。

佐竹君が、ヘニャリと笑う。
感情を隠す術をすっかり忘れてしまったような、無防備な笑顔で。

(うっ…!)

心臓が破裂しかかった。

なんか…

(佐竹君って、わかりやすいかも…)

嬉しいとか、安心したとか、そういうのがそのまま顔に出る。

隠そうとしても、たぶん隠しきれない。

(素直なんだろうなぁ)


私は、無意識に感情に“フィルター”をかけている。

伝わりすぎないように。
傷つきすぎないように。

でも、佐竹君は違う。

たぶん、佐竹君にはフィルターがほとんどない。

だからこそ、まっすぐ届く。

誰かの何気ない一言も、冗談も、曖昧なニュアンスも。

それは、きっと佐竹君の強さでもあり、同時に危うさでもある。

(……しんどくないわけ、ないよね)


ふと、あの前髪が頭に浮かぶ。

隠しているつもりはないのに、どこか守っているみたいだった理由。

(フィルターの代わり……だったのかも)

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