隣の席の佐竹くんには…

最終章 隣から見えた景色

文化祭が終わって、数日。
校内は、すっかり元の静けさを取り戻していた。

浮かれていた空気も、騒がしさも、魔法が解かれたように消え、いつも通りの授業と、いつも通りの時間が流れている。


……ひとつだけ、前と違うことを除けば。

「梅沢さん、おはよう」

「おはよう」

教室へ入るなり、佐竹君は嬉しそうな顔を向けてくる。

それは、もう、ストレートに。

その笑顔に、心臓を甘く掴まれているみたいに、毎朝ドキッとしている。


「…あ。それ、新しい味が出たんだね」

佐竹君の机の中から見えたカロリーダイエットの袋を指さすと、彼は楽しそうに出して見せる。

「ぶどう味。オレもまだ食べてないんだけど、食べてみる?」

「うん」

佐竹君に一個もらって、二人で同時に食べる。

「「………」」

感想は言わずに、視線だけを合わせる。

「「……微妙」」

ハモって、同時に笑いを吹き出した。

ふとした瞬間に実感して、胸の奥がじんわり温かくなる。

特別なことをしているわけじゃないのに。

手を繋いでいるわけでも、甘い言葉を交わしているわけでもないのに。


こうして隣にいるだけで、何気ない日常の中に幸せを感じられる。
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