今日の恋、予報します。
 そして――放課後。


 結局。


 私は一度も、名前を呼ばれなかった。


 「……」


 帰り支度をしながら、スマホの画面を見る。


 朝の予報。



 ☀️ 快晴
 『今日は、好きな人から名前を呼ばれるでしょう』


 ……呼ばれてないんだけど。


 朝は「晴山」だった。


 昼休みも「ねえ」とか「ちょっと」とか。


 放課後になっても、特に何もない。


 「……信じた私が馬鹿だった」


 小さく呟いて、鞄を肩にかける。


 そもそも、あんな怪しい予報を信じる方がおかしかったんだ。


 名前を呼ばれるなんて。


 そんなの――


 「さくら!」


 「…………え?」


 聞き間違いかと思った。


 でも、確かに聞こえた。


 私の名前。


 ゆっくり振り返る。


 そこには、少し離れたところで手を振っているみつはるがいた。


 「……っ!」


 思わず顔が熱くなる。


 「な、なに!?」


 「いや」


 みつはるは、いたずらっぽく笑った。


 「また明日ー!」


 「…………」


 「じゃ!」


 そう言って、ひらひらと手を振る。


 私はしばらく固まったまま、その背中を見送った。


 …………。


 ……え?


 まさか。


 「…………挨拶するために呼び止めただけ?」


 思わず力が抜ける。


 「なにそれぇ……!」


 誰もいない教室で、ひとり小さく頭を抱えた。


 そりゃそうだ。


 天野光晴が私の名前を呼んだ。


 それだけで、心臓が壊れそうなくらい嬉しかった。


 「……あの予報、本物なの?」


 そう呟いた直後。


 ポケットの中で、スマホが震えた。


 「……え?」


 画面を見る。


 そこには――



 《本日の恋愛天気》

 ☀️ 快晴

 『予報は的中しました』



 「…………は?」


 私はもう一度、さっきの通知を見た。


 そして。


 「……うそでしょ」


 今日一番大きなため息をついた。


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