今日の恋、予報します。

雷雨、それと予期せぬ君

 それは、ある休日のことだった。


 朝から予定なんて何もない。


 目覚ましをかける必要もなくて、昼近くまでベッドでごろごろしていた。


 「……暇だなぁ」


 高校三年生の休日って、もっと有意義に過ごすものじゃないんだろうか。


 勉強とか。


 進路のこととか。


 ……恋愛とか。


 「…………」

 そこで、ふと思い出す。


 みつはる。


 「……会いたいな」


 ぽろっと口から出て、自分で固まる。


 「…………」


 何言ってんの、私。


 休日にまで会いたいとか。


 重症すぎる。


 私は枕を抱きしめながら、ひとりで悶えた。


 「……でも、会えたらいいのにな」


 そのとき。


 ――ピコン。


 「……ん?」


 スマホが震えた。


 私はベッドの上で体を起こす。


 この音、まさか。


 画面を見る。



 《今日の恋愛天気予報》

 ⛈️ 雷雨

 『今日は、予期せぬ出会いがあるでしょう』



 「…………」


 雷雨?


 しかも。


 予期せぬ出会い?


 「……休日なのに?」


 これまでの予報は、全部学校で起こったことだった。


 名前を呼ばれたり。


 視線を感じたり。


 嫉妬したり。


 でも今日は休日。


 「……まさかね」


 私はスマホを置いた。


 休日にみつはると会うなんて、そんな都合のいいことが起こるわけない。


 そう思っていた。


 ……その三十分後までは。


 「ちょっとコンビニ行ってこよ」


 家を出て、近所のコンビニへ向かう。


 飲み物とアイスでも買おう。


 そう思って歩いていた、そのとき。


 コンビニの前に見覚えのある人影があった。


 茶色っぽい髪。


 見慣れた横顔。


 そして。


 私服姿。


 「…………え?」


 心臓が、一気に跳ねる。


「……みつはる?」


 振り向いた彼と目が合った。


 「……あれ?」


 一瞬、みつはるも驚いた顔をする。


 そして。


 「晴山?」


 「…………っ」


 休日に。


 私服のみつはる。


 しかも、こんなところで。


 「な、なんでここに……?」


 「バイト終わり」


 「バイト……?」


 「ここで」


 そう言って、コンビニ指差す。


 「今終わったとこ」


 「そ、そうなんだ……」


 どうしよう。


 学校で見るのとは全然違う。


 制服じゃないだけで、こんなに変わるんだ。


 「さくらは?」


 「私は……アイス買いに」


 「俺も食べたい」


 「え?」


 「一緒に食べない?」


 「…………」


 一緒にアイス。


 休日に。


 みつはると。


 「……うん」


 声が上ずった。


 「じゃあ、買ってこよ」


 「うん!」


 二人でコンビニに入る。


 アイスコーナーの前で、みつはるが真剣な顔をして悩んでいる。


 「どれにしようかな」


 「そんな悩む?」


 「重要じゃん」


 「ふふ」


 「なに?」


 「いや、なんか意外」


 「何が?」


 「みつはるって、こういうことで悩むんだなって」


 「俺だって悩むよ」


 「そっか」


 なんだか。


 学校より、少しだけ近い気がする。


 二人でアイスを買って、コンビニの前で食べる。


 「おいしい」


 「うん」


 「休日にこうやって会うの、なんか変な感じ」


 「……私も」


 「でも、楽しい」


 「……うん」


 胸の奥が、じんわり温かくなる。


 もしかして。


 今日の予報は――


 本当に当たった?


 「ねえ、晴山」


 「ん?」


 「今日、暇?」


 「……まあ」


 「じゃあ、もうちょっと一緒にいよ」


 「…………」


 「嫌?」


 「嫌じゃない!」


 思わず即答してしまった。


 みつはるが笑う。


 「よかった」


 ……無理。


 その笑顔は無理。


 学校じゃない場所で見ると、破壊力が違いすぎる。


 そんなことを考えていたら。


 ぽつ。


 「……?」


 頬に何か落ちた。


 空を見上げる。


 「雨?」


 ぽつ、ぽつ。


 次の瞬間。


 ザーッ!!


 「えっ!?」


 突然、大粒の雨が降り始めた。


 「うそ!」


 「ちょ、こっち!」


 みつはるに腕を引かれて、コンビニの軒下へ駆け込む。


 「……びっくりした」


 「天気予報、雨なんて言ってなかったよね?」


 「うん……」


 スマホを確認する。


 今日の恋愛天気予報。



 ⛈️ 雷雨

 『今日は、予期せぬ出会いがあるでしょう』



 「…………」


 「どうした?」


 「……予報、当たった」


 「え?」


 そのとき。


 ゴロゴロゴロ……。


 遠くで雷が鳴った。


 雨はますます強くなる。


 「これ、しばらく止まなそう」


 「どうしよう……」


 「俺の家、ここから近いけど」


 「え?」


 「雨宿りしてく?」


 「……いいの?」


 「うん」


 少し迷ってから。


 私は頷いた。


< 8 / 16 >

この作品をシェア

pagetop