目覚めたら、最推しの腕の中でした~1度終わった私の人生、もう一度恋をしました。~

第53話 推しの前で、婚約者ですなんて言えません

ASTERの。

四人に会う日。

私は。

朝から。

服を。

三回。

着替えた。

「……違う」

鏡を見る。

着替える。

「これも」

違う。

また。

着替える。

「何着ればいいの……」

仕事なら。

スタイリストさんがいる。

一ノ瀬紗良として。

芸能人に会うだけなら。

こんなに。

悩まない。

でも。

今日は。

違う。

私は。

天城陽向の。

婚約者として。

ASTERに。

会う。

しかも。

そのASTERは。

私が。

十年以上。

テレビの向こうから。

見てきた人たち。

「……無理」

結局。

陽向へ。

メッセージを送った。

『何着ていけばいい?』

すぐ。

返事。

『服』

「……」

私は。

画面を。

睨んだ。

『それは分かってる』

『何でもいいよ』

『何でもよくない』

『美月なら何着ても可愛い』

「そういうことじゃない!」

思わず。

声に出る。

すると。

電話が。

かかってきた。

「何?」

『怒ってる?』

「怒ってない」

『怒ってるじゃん』

「だって」

私は。

ベッドに。

並べた服を見る。

「ASTERに」

「会うんだよ?」

『うん』

「陽向の」

顔が。

熱くなる。

「婚約者として」

電話の向こう。

一瞬。

静か。

そして。

『もう一回言って』

「切るよ」

『ごめん!』

私は。

ため息。

「本当に」

「何着ればいい?」

陽向が。

少し考える。

『美月が』

『いつも着てるのでいいよ』

「でも」

『今日』

声が。

少し優しくなる。

『一ノ瀬紗良として』

『仕事しに来るわけじゃないでしょ』

「……」

『俺が好きな人を』

『みんなに紹介するだけ』

胸が。

少し。

落ち着いた。

「……そっか」

『うん』

「じゃあ」

私は。

並べた中から。

一番。

自分らしいと思える。

シンプルな。

ワンピースを取った。

「これにする」

『見えない』

「知ってる」

◇◇◇

約束の場所は。

ASTERが。

よく使っている。

事務所の。

小さな会議室。

一般の人が。

入ってこない。

安全な場所。

廊下を。

陽向と並んで。

歩く。

「……」

「……」

「美月」

「何?」

「さっきから」

「右手と右足」

「一緒に出そう」

「出てない!」

「出てる」

「見ないで!」

陽向が。

笑う。

「そんな緊張する?」

私は。

立ち止まった。

「するよ!」

「だって」

「陽向は!」

指差す。

「もう」

「私の中では」

「陽向なの!」

「うん」

「でも」

会議室の。

扉を見る。

「中にいる人たちは」

声が。

小さくなる。

「ASTERなの!」

「俺もASTERだけど?」

「そういう意味じゃない!」

陽向。

大笑い。

「美月」

「何?」

「大丈夫」

「……」

「俺」

陽向が。

私の手を。

一瞬だけ。

握る。

「隣いるから」

胸が。

少し。

落ち着く。

「……絶対?」

「絶対」

「途中で」

「トイレとか」

「行かないでね」

「そこまで!?」

「今は!」

「分かった分かった」

そして。

陽向が。

ドアノブへ。

手をかける。

「行くよ」

「待って」

「何?」

「やっぱり」

「帰」

ガチャ。

「開けた!」

「遅い!」

◇◇◇

「来た」

「おー」

「どうぞ」

中には。

四人。

全員。

いた。

「……」

私は。

完全に。

固まった。

テレビ。

雑誌。

ライブ。

何度も。

見てきた。

ASTER。

しかも。

近い。

近すぎる。

「美月?」

隣で。

陽向が。

小声。

私は。

慌てて。

頭を下げた。

「は、初めまして!」

「初めまして」

一人が。

笑う。

「一ノ瀬紗良さんとは」

「何度か現場で」

「あ」

そうだった。

身体としては。

初対面じゃない人もいる。

でも。

私には。

ほぼ。

初対面。

「そうですよね」

「……」

「すみません」

「何が?」

もう。

訳が分からない。

陽向が。

横で。

笑いを。

堪えている。

「陽向」

「何?」

「笑わないで」

「まだ笑ってない」

「顔が笑ってる」

メンバーの一人が。

面白そうに。

私を見る。

「本当に」

「陽向の前だと」

「雰囲気違うね」

「え?」

「現場で会ったとき」

「もっと」

「こう」

手で。

空気を。

表現しながら。

「シュッとしてた」

「ああ……」

一ノ瀬紗良。

だったころ。

「今」

「めちゃくちゃ」

別の人が。

笑う。

「普通に緊張してる」

「……」

顔が。

熱い。

「すみません」

また。

謝った。

その瞬間。

四人のうち。

一人が。

にやっとする。

「それ」

「陽向から聞いた」

「え?」

「すぐ謝るって」

「……陽向」

私は。

ゆっくり。

隣を見る。

「何を」

「話したの?」

「ちょっとだけ!」

「ちょっと?」

「美月のこと」

「全部じゃない!」

「どこまで!?」

一気に。

いつもの。

調子になる。

四人が。

笑った。

「ああ」

一人が。

頷く。

「この感じか」

「何が!?」

「陽向が」

「めちゃくちゃ」

「楽しそうに話してた理由」

「……」

陽向の顔が。

赤くなる。

「やめろって!」

私は。

逆に。

固まる。

「陽向が」

「私のこと」

「話してたんですか?」

「めっちゃ」

「おい!」

「美月が」

「美月が」

「美月が」

「って」

「やめろおおお!」

陽向が。

止めに入る。

私は。

口元を。

押さえた。

嬉しい。

でも。

恥ずかしい。

そして。

ここで。

事件は。

起きた。

◇◇◇

メンバーの一人が。

私に。

聞いた。

「陽向の」

「どこが好きなんですか?」

「え?」

頭。

真っ白。

陽向が。

横で。

「おい!」

と。

止める。

でも。

もう。

質問は。

耳に入った。

どこが。

好き?

ずっと。

テレビで。

応援していた頃なら。

明るいところ。

笑顔。

大きなリアクション。

アニメやゲームを。

楽しそうに。

話すところ。

全部。

すぐ。

答えられた。

でも。

今は。

もっと。

いっぱい。

知っている。

弱いところ。

無理して。

笑うところ。

嫉妬するところ。

疲れたって。

言えるようになったところ。

私を。

高瀬美月として。

見つけてくれたところ。

子どもたちを。

大切にしてくれるところ。

「……全部です」

口から。

出た。

「……」

全員。

止まる。

陽向も。

止まる。

私は。

自分の発言に。

気づく。

「……あ」

終わった。

「いや!」

慌てる。

「全部って」

「そういう!」

「どのそういう?」

「えっと!」

顔が。

熱い。

「アイドルとしても!」

「……」

「男性としても!」

「……」

「婚約者としても!」

言った。

言ってしまった。

しん。

会って。

おそらく。

三十秒ちょっと。

私は。

長年見てきた。

推したちの前で。

「婚約者としても好きです」

と。

宣言した。

「……」

陽向が。

両手で。

顔を覆った。

「美月……」

「ごめん!」

「いや」

肩が。

震えている。

「俺は嬉しい」

「笑ってるよね!?」

「めっちゃ嬉しい!」

そして。

四人が。

一斉に。

笑い出した。

「本当にファンじゃん!」

「陽向より反応面白い!」

「婚約者としても!」

「やめてください!」

私は。

顔を。

覆った。

「帰りたい……」

「まだ来たばっか!」

陽向が。

大笑いする。

予告通り。

私は。

会って早々。

とんでもないことを。

口走った。

◇◇◇

でも。

その失敗のおかげか。

不思議なくらい。

緊張は。

少し。

なくなった。

「じゃあ」

一人が。

飲み物を。

渡してくれる。

「改めて」

「座りましょうか」

「はい……」

私は。

陽向の隣。

宣言通り。

陽向は。

ちゃんと。

隣にいてくれる。

「陽向から」

一人が。

言った。

「結婚するって」

「聞きました」

「……はい」

「おめでとうございます」

「ありがとうございます」

今度は。

ちゃんと。

言えた。

「ただ」

少し。

真面目な顔。

「俺たちも」

「心配はしてます」

私は。

頷いた。

「はい」

「熱愛報道も」

「出たばかりだし」

「うん」

「陽向は」

「ASTERとして」

「今」

「かなり大事な時期だから」

「はい」

陽向が。

横から。

口を挟もうとする。

でも。

私は。

その手を。

少し。

触って。

止めた。

私に。

聞かれている。

私が。

答えたい。

「私も」

「怖いです」

四人が。

静かに。

聞く。

「陽向と」

「付き合うことで」

「陽向の仕事に」

「影響が出たら」

「どうしようって」

「……」

「今でも」

「思います」

陽向が。

少し。

私を見る。

「一度」

私は。

苦笑する。

「別れたほうが」

「いいんじゃないかって」

「言ったこともあります」

「美月」

「うん」

「でも」

私は。

続けた。

「怒られました」

四人が。

陽向を見る。

「珍しい」

「いや」

陽向が。

慌てる。

「怒ったっていうか!」

「結構怒ってた」

「美月!」

少し。

笑い。

そして。

私は。

もう一度。

真面目に。

四人を見る。

「そのとき」

「言われました」

「俺のためって言って」

「俺が一番嫌なことを」

「一人で決めるなって」

「……」

「それで」

「私も」

「分かったんです」

「陽向のために」

「私が勝手に」

「陽向の人生を」

「決めちゃいけない」

「……」

「だから」

胸に。

手を置く。

「今は」

「怖いことも」

「心配なことも」

「ちゃんと」

「二人で考えたいと思っています」

四人が。

少し。

顔を見合わせる。

そして。

一人が。

陽向を見る。

「同じこと」

「言ってたな」

「え?」

「陽向も」

「一人で決めずに」

「みんなで考えたいって」

「……」

私は。

隣の。

陽向を見る。

陽向も。

私を見る。

少し。

照れくさくて。

二人。

笑った。

◇◇◇

「美月さん」

今度は。

別のメンバー。

「はい」

「一個」

「聞いていい?」

「はい」

「陽向と」

「結婚したら」

「仕事」

「どうするつもり?」

私は。

迷わなかった。

「続けたいです」

陽向が。

隣で。

嬉しそうに。

笑う。

「主演ドラマも」

「決まりました」

「うん」

「これから」

「もっと」

「女優として」

「やってみたいことも」

「増えてきて」

「……」

「結婚したから」

「辞めるということは」

「考えていません」

「そっか」

「はい」

「じゃあ」

もう一人。

「陽向に」

「家庭に入ってほしいとか」

「言われたら?」

「言わない!」

陽向が。

先に。

叫んだ。

全員が。

笑う。

私は。

陽向を見る。

「言わないよね?」

「言わない!」

「よかった」

「そこ確認する!?」

また。

笑い。

でも。

私は。

少し。

真剣に。

続けた。

「私」

「一度目の人生で」

そこまで。

言って。

止まる。

一度目の人生。

この人たちは。

まだ。

知らない。

私は。

言い方を。

変える。

「昔」

「自分が」

「何をしたいかより」

「周りが」

「どうしたいかを」

「優先して」

「生きていた時期が」

「長かったんです」

「……」

「だから」

「今度は」

「陽向と結婚しても」

「陽向のためだけに」

「自分を」

「なくしたくない」

陽向の。

手が。

私の手へ。

少し。

触れる。

人前。

だから。

握らない。

でも。

そこにいる。

「陽向も」

「それでいいって」

「言ってくれています」

「うん」

陽向が。

頷く。

一人が。

少し。

笑った。

「なるほど」

「何ですか?」

「陽向が」

「変わった理由」

「え?」

「分かった気する」

私は。

目を丸くする。

「陽向」

その人が。

言う。

「昔」

「自分がやりたいこと」

「全力で」

「みんな巻き込むタイプだったんですよ」

「ちょっと!」

「でも今」

「美月さんが」

「どうしたいか」

「めちゃくちゃ」

「聞くでしょ」

「……」

私は。

思わず。

笑った。

「聞きます」

「やっぱり」

「何でも」

「美月はどうしたい?」

「って」

「言います」

陽向が。

少し。

照れている。

「だって」

「大事じゃん」

「うん」

私は。

その横顔を。

見た。

「すごく」

「助けられてます」

また。

陽向が。

固まる。

「美月」

「何?」

「今日」

「急に」

「俺を褒めすぎ」

「事実だから」

「……」

「無理」

顔を。

覆った。

四人が。

笑う。

◇◇◇

しばらくして。

一番。

慎重そうに。

話していたメンバーが。

私へ。

聞いた。

「……陽向のこと」

「はい」

「本当に」

「好きなんですね」

その質問。

さっきなら。

また。

恥ずかしく。

なったかもしれない。

でも。

今度は。

ちゃんと。

答えられた。

「はい」

私は。

笑う。

「大好きです」

陽向が。

隣で。

また。

固まる。

「……」

「陽向?」

「今日」

「俺」

「死ぬかもしれない」

「何で?」

「幸せすぎて」

「大げさ」

「大げさじゃない!」

「うるさい」

いつもの。

私たち。

すると。

そのメンバーが。

ふっと。

笑った。

「じゃあ」

「俺も」

「応援します」

「……」

私が。

顔を上げる。

「いいんですか?」

「心配は」

「まだ」

「あります」

「はい」

「仕事も」

「ファンも」

「ASTERも」

「大事です」

「……はい」

「でも」

陽向を見る。

「こいつも」

「大事なんで」

胸が。

温かくなる。

「陽向が」

「この人と」

「生きたいって」

「本気で思ってるなら」

「……」

「その方法を」

「俺たちも」

「一緒に考えます」

陽向が。

少し。

目を。

赤くした。

「……ありがとう」

「泣くなよ」

「泣いてない!」

「最近よく泣くじゃん」

「美月のせい!」

「私!?」

「幸せで泣かされる!」

「知らないよ!」

みんなが。

笑う。

私は。

その笑い声を。

聞きながら。

思った。

ああ。

陽向は。

この人たちと。

ずっと。

生きてきたんだ。

血の繋がった。

家族とは。

違う。

でも。

きっと。

家族みたいな。

大切な人たち。

そんな人たちに。

私を。

会わせてくれた。

それが。

嬉しかった。

◇◇◇

話が。

落ち着いたころ。

突然。

一人が。

言った。

「じゃあ」

「何ですか?」

「美月さん」

「本当に」

「ASTERのファンなんですよね?」

「……」

来た。

できれば。

触れずに。

終わりたかった。

「はい」

「どれくらい?」

陽向が。

にやっとする。

「十年以上」

「陽向!」

「いいじゃん」

「誰推し?」

また。

その質問。

「……」

全員。

私を見る。

逃げられない。

私は。

小さく。

答えた。

「陽向です」

「うわあ!」

「本人いる前で!」

「すご!」

「推しと結婚!」

陽向が。

得意そうに。

胸を張る。

「ほら!」

「何がほらなの!」

「俺」

「昔から」

「美月のタイプだった」

「やめて!」

もう。

恥ずかしすぎる。

すると。

一人が。

さらに。

聞く。

「じゃあ」

「昔の陽向と」

「今の陽向」

「どっちが好き?」

「え?」

意地悪。

でも。

答えは。

簡単だった。

「今」

陽向が。

止まる。

「え」

「今の陽向」

「……」

「アイドルの陽向も」

「ずっと好きだったけど」

私は。

隣を見る。

「今は」

「テレビでは」

「見えないところも」

「知ってるから」

「……」

「今のほうが」

「好きです」

「……」

陽向。

また。

両手で。

顔を覆った。

「もう無理」

「今日何回目?」

「美月が!」

「何?」

「俺のこと」

「好きすぎる!」

「言わせたの」

「そっちでしょ!」

四人が。

大爆笑。

◇◇◇

帰り。

事務所の。

廊下。

私は。

陽向の隣を。

歩いていた。

「……疲れた」

「お疲れ」

「すごく」

「緊張した」

「うん」

「でも」

私は。

少し笑う。

「楽しかった」

陽向の顔が。

ぱっと。

明るくなる。

「本当?」

「うん」

「よかった」

「それに」

「何?」

「ちょっと」

「安心した」

「何が?」

「陽向」

私は。

歩きながら。

言う。

「大事にされてるんだね」

陽向が。

少し。

目を丸くする。

「みんな」

「仕事のこと」

「グループのこと」

「心配してたけど」

「……」

「それって」

「陽向のことも」

「ASTERのことも」

「大事だからでしょ?」

「……うん」

「いい仲間だね」

陽向が。

少し。

照れくさそうに。

笑う。

「うん」

「俺」

「ASTER好き」

「知ってる」

「美月も?」

「好き」

「俺が一番?」

「まだ言う?」

「大事」

私は。

笑った。

「陽向が一番」

「よっしゃ!」

「声!」

「ごめん!」

◇◇◇

エレベーターの中。

二人きり。

陽向が。

そっと。

私の手を。

握った。

「美月」

「何?」

「今日」

「来てくれて」

「ありがとう」

「うん」

「俺」

「結婚って」

「美月と俺だけのことだと」

「思ってた部分もあった」

「うん」

「でも」

「子どもたちも」

「旦那さんも」

「ASTERも」

「事務所も」

「ファンも」

「……」

「いろんな人の」

「人生に」

「ちょっとずつ」

「関わるんだな」

「うん」

「だから」

私を見る。

「ちゃんと」

「一個ずつ」

「話したい」

「……うん」

「逃げない」

「うん」

「でも」

陽向が。

私の手を。

少し。

強く握る。

「誰かのために」

「美月との結婚」

「なかったことには」

「しない」

胸が。

温かくなる。

「私も」

「……」

「陽向のためって」

「勝手に」

「いなくならない」

陽向が。

笑う。

「約束」

「うん」

エレベーターが。

一階へ。

着く。

ドアが。

開く。

でも。

私たちには。

まだ。

一番。

大きな相手が。

残っている。

それは。

陽向を。

ずっと。

応援してきた。

何万人。

何十万人もの。

ファン。

◇◇◇

その日の夜。

ASTERの。

マネージャーから。

陽向へ。

連絡が入った。

『メンバーとは話せたな』

『はい』

『全員からも聞いた』

『……はい』

そして。

次。

『じゃあ今度は』

少し。

間。

『公表するかどうか』

『具体的に考えるぞ』

陽向の。

指が。

止まった。

同じころ。

私の事務所にも。

連絡が。

入っていた。

『一ノ瀬さん』

『天城さんとの件ですが』

『結婚まで進むのであれば』

胸が。

高鳴る。

『熱愛報道への対応を』

『もう一度』

『二人の事務所で』

『話し合う必要があります』

私は。

左手の。

薬指を見る。

家の中だけで。

輝いている。

婚約指輪。

これを。

いつか。

外でも。

堂々と。

つけられる日は。

来るのだろうか。

私は。

もう。

隠れるために。

陽向と。

結婚するんじゃない。

でも。

公表するということは。

陽向の。

アイドル人生そのものと。

向き合うこと。

そして。

その先には。

きっと。

一番。

怖くて。

一番。

大切な人たちがいる。

――陽向を愛してきた。

――ファンの人たち。

私たちは。

とうとう。

その人たちへ。

未来を。

どう伝えるのか。

決めるときが。

近づいていた。
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