目覚めたら、最推しの腕の中でした~1度終わった私の人生、もう一度恋をしました。~

第58話 あなたにも、来てほしい

結婚式を。

すると決めてから。

私たちの。

『結婚会議』は。

さらに。

現実的になった。

「招待客」

陽向が。

ノートを開く。

「まず」

「ASTER四人」

「うん」

「事務所の人」

「うん」

「ドラマ関係」

「神崎さん」

「……」

陽向の。

ペンが。

止まる。

「何?」

「いや」

「書いて」

「はい」

渋々。

『神崎悠人さん』

と。

書く。

「さん付けなんだ」

「大人だから」

「さっきまで」

「警戒対象って」

「言ってたのに」

「それとこれとは別」

私は。

笑った。

そして。

次。

陽向が。

何も言わず。

空白を。

一つ。

残した。

そこに。

書く名前。

分かっている。

前の夫。

「……」

私も。

黙った。

◇◇◇

子どもたちは。

もちろん。

全員。

招待する。

それは。

最初から。

決まっている。

問題は。

その父親。

私の。

一度目の人生の。

夫。

今は。

五人の子どもたちの父親として。

私と。

繋がっている人。

「美月」

陽向が。

ペンを置いた。

「やっぱり」

「迷ってる?」

「……うん」

「呼びたい?」

「それも」

私は。

少し。

考える。

「呼びたいって」

「いうより」

「呼ばないって」

「最初から」

「決めるのが」

「違う気がする」

陽向が。

頷く。

「うん」

「だって」

「子どもたちからしたら」

「パパで」

「……」

「私たちが」

「結婚したあとも」

「その関係は」

「変わらない」

「うん」

「それに」

私は。

テーブルの。

指先を。

見つめる。

「私の人生の」

「三十四年間の中に」

「いた人だから」

陽向は。

何も。

言わず。

聞いている。

「幸せだったことも」

「苦しかったことも」

「喧嘩したことも」

「子どもたちが」

「生まれたことも」

「……」

「全部」

「なかったことには」

「したくない」

「うん」

「だから」

私は。

顔を上げる。

「来るかどうかは」

「本人に」

「決めてもらいたい」

陽向が。

少し。

笑った。

「じゃあ」

空白に。

文字を書く。

『子どもたちのお父さん』

名前ではなく。

そう。

書いた。

私は。

それを見て。

少し。

胸が。

温かくなった。

今の。

関係。

そのものだった。

◇◇◇

招待状を。

渡す日は。

思っていた以上に。

緊張した。

子どもたちと。

会ったあと。

前の夫に。

少し。

時間をもらった。

「話って?」

「うん」

私は。

バッグから。

一通の。

封筒を。

取り出す。

彼が。

それを。

見る。

「……結婚式?」

「うん」

「するんや」

「することにした」

「そっか」

封筒を。

差し出す。

でも。

手が。

少し。

止まる。

「これ」

「……俺?」

「うん」

夫が。

目を。

丸くする。

「俺を」

「呼ぶん?」

「……」

私は。

頷いた。

「無理に」

「来てほしいとは」

「言わない」

「……」

「来たくなかったら」

「来なくていい」

「子どもたちだけ」

「来てもらっても」

「大丈夫」

「うん」

「でも」

私は。

ちゃんと。

言いたい。

「選択肢として」

「あなたにも」

「渡したかった」

夫は。

しばらく。

封筒を。

見ていた。

◇◇◇

「変やな」

「え?」

夫が。

苦笑する。

「元嫁の」

「結婚式に」

「呼ばれるって」

「……そうだよね」

「しかも」

「相手」

「天城陽向やろ」

「うん」

「お前」

「昔」

「テレビ見ながら」

「この人ほんま好きって」

「言うとったよな」

「……」

顔が。

熱くなる。

「今それ言う?」

「いや」

夫が。

少し笑う。

「すごい話やなって」

「私も」

「そう思う」

二人。

少し。

笑った。

でも。

笑いが。

落ち着いたあと。

夫が。

真面目な顔になる。

「美月」

久しぶりに。

名前で。

呼ばれる。

「何?」

「俺」

「行ったら」

「邪魔にならん?」

「……」

「天城さん」

「嫌じゃないん?」

私は。

首を振る。

「陽向とも」

「話した」

「……」

「複雑な気持ちは」

「あるって」

「言ってた」

「やろな」

「でも」

少し。

笑う。

「私の過去を」

「自分との結婚で」

「塗り替えたいわけじゃないって」

夫が。

静かになる。

「……そっか」

「うん」

「だから」

「陽向が」

「呼んでもいいって」

「言ったから」

「あなたに」

「渡してるわけじゃない」

「……」

「私が」

「招待したいと思ったから」

「渡した」

夫は。

少し。

驚いたように。

私を見る。

「……変わったな」

「また?」

「いや」

少し。

笑う。

「前なら」

「天城さんが」

「どう思うか」

「俺がどう思うか」

「子どもらがどう思うか」

「全部」

「先に考えて」

「自分がどうしたいか」

「最後やったやろ」

胸が。

小さく。

揺れた。

「そうかも」

「今は」

「ちゃんと」

「自分で」

「呼びたいって」

「言うんやな」

「……うん」

私も。

少し。

笑った。

「呼びたい」

今度は。

はっきり。

言えた。

◇◇◇

夫は。

すぐには。

返事をしなかった。

「ちょっと」

「考えていい?」

「もちろん」

「子どもらにも」

「聞きたい」

「うん」

「俺がおることで」

「変に」

「気使わせたくないし」

「うん」

「それに」

少し。

視線を。

落とす。

「俺自身も」

「どういう気持ちに」

「なるか」

「分からん」

その言葉。

私は。

否定しなかった。

「そりゃ」

「そうだよね」

「うん」

「だから」

「来ないって」

「決めても」

「私は」

「何も思わない」

夫が。

少し。

笑う。

「それは」

「ありがたい」

そして。

封筒を。

受け取った。

「ちゃんと」

「考えるわ」

「うん」

◇◇◇

そのあと。

子どもたちと。

結婚式の。

話をした。

「ドレス!」

星が。

一番に。

反応した。

「ママ」

「どんなの着るの?」

「まだ」

「決めてない」

「一緒に」

「見に行きたい!」

「いいよ」

「ほんと!?」

顔が。

ぱっと。

明るくなる。

すると。

ほかの子も。

「僕も!」

「俺も!」

「見る!」

一気に。

増える。

私は。

思わず。

笑った。

「みんなで?」

「うん!」

「多すぎない?」

「ママ」

「一人で決めたら」

「変なの選びそう」

「失礼!」

星が。

笑う。

「じゃあ」

「女子代表で」

「私が行く」

「それ」

「女子とか関係ある?」

「ある」

「何が?」

「センス」

「ママよりある」

「……」

否定。

しきれない。

◇◇◇

一番小さい子は。

結婚式というものが。

まだ。

よく分かっていない。

「ママ」

「何?」

「けっこんしきって」

「なにするの?」

「うーん」

「ママと陽向が」

「みんなの前で」

「これから」

「一緒に生きていきますって」

「約束する日」

「ふーん」

興味。

薄い。

「ケーキある?」

「あると思う」

「行く!」

「そこ!?」

みんなが。

笑う。

そして。

以前。

少し。

複雑そうにしていた子が。

私へ。

聞いた。

「パパも」

「来るん?」

一瞬。

静かになる。

「招待状は」

「渡したよ」

「……」

「来るかどうかは」

「パパが」

「決める」

「そっか」

「来てほしい?」

私は。

聞いた。

その子は。

少し。

迷ったあと。

「……来てほしいかも」

「うん」

「だって」

少し。

言いにくそうに。

続ける。

「ママが」

「結婚するの」

「僕らだけ見て」

「パパだけ」

「知らんのも」

「変な感じする」

「……」

私は。

頷いた。

「そうだね」

星も。

静かに。

言う。

「私も」

「来てもいいと思う」

「うん」

「別に」

「パパとママが」

「また夫婦になるわけじゃ」

「ないし」

「うん」

「でも」

「私たちの」

「パパとママでは」

「あるから」

胸が。

温かくなる。

「うん」

「そうだね」

◇◇◇

その日の夜。

陽向へ。

電話した。

『渡した?』

「うん」

『どうだった?』

「考えるって」

『そっか』

「嫌?」

私は。

聞いた。

陽向が。

少し。

黙る。

『正直?』

「うん」

『ちょっと』

「うん」

『変な感じはする』

「……」

『だって』

少し。

苦笑する声。

『美月の元旦那さんが』

『俺と美月の結婚式にいるんだよ?』

「うん」

『冷静に考えたら』

『すごい』

「確かに」

二人。

笑う。

でも。

陽向は。

続けた。

『でも』

「うん」

『俺』

『子どもたちと』

『ちゃんと』

『これからも』

『関わっていきたい』

「……」

『だったら』

『お父さんとも』

『一生』

『完全に無関係って』

『わけにはいかないだろ』

「うん」

『だったら』

少し。

息を吐く。

『変な感じするから』

『避けるより』

『少しずつ』

『慣れたほうがいい』

胸が。

じんわり。

温かくなる。

「陽向」

『何?』

「ありがとう」

『うん』

「それに」

私は。

少し。

笑う。

「元夫が来ても」

「新郎は陽向だから」

電話の向こう。

完全に。

止まった。

「……陽向?」

『もう一回』

「言わない」

『美月!』

「ふふっ」

『今の』

『めちゃくちゃ効いた』

「何に?」

『全部』

「意味分かんない」

でも。

嬉しそうな。

声。

私も。

笑った。

◇◇◇

そして。

次に。

大きな問題。

ウェディングドレス。

「……多い」

ショップへ。

入った瞬間。

私は。

圧倒されていた。

白。

白。

白。

でも。

全部。

違う。

Aライン。

プリンセスライン。

マーメイド。

レース。

サテン。

袖あり。

袖なし。

「無理」

「ママ」

星が。

呆れる。

「まだ」

「一着も」

「着てないよ」

「だって」

「多すぎる」

「だから」

「試着するの」

「何着?」

「いっぱい」

「疲れる」

「ママ!」

今日は。

星と。

二人。

陽向には。

まだ。

見せない。

本番まで。

秘密。

「ママ」

星が。

私を見る。

「一個」

「お願い」

「何?」

「ちゃんと」

「自分が着たいの」

「選んで」

「……」

「陽向くんが」

「好きそうとか」

「みんなが」

「喜びそうとか」

「じゃなくて」

「……」

「ママが」

「これがいいって」

「思ったやつ」

胸が。

小さく。

鳴った。

「うん」

私は。

ドレスを見る。

今までなら。

どうしただろう。

体型。

年齢。

周りの目。

二回目の結婚。

いろんなことを。

考えて。

一番。

無難なものを。

選んでいたかもしれない。

でも。

今日は。

違う。

「……これ」

一着。

目に。

止まった。

柔らかな。

Aライン。

上半身には。

繊細なレース。

スカートは。

派手すぎず。

歩くたび。

光を。

ふわっと。

反射する。

「これ」

「着てみたい」

星の顔が。

ぱっと。

明るくなった。

「うん!」

◇◇◇

試着室。

ドレスを。

着せてもらう。

鏡の前。

カーテンが。

開く。

「……」

私自身が。

固まった。

鏡の中。

一ノ瀬紗良の。

顔。

白い。

ウェディングドレス。

でも。

その姿を。

見た瞬間。

不思議と。

違和感は。

なかった。

「あ……」

後ろから。

星の声。

振り向く。

星が。

口元を。

押さえている。

「どう?」

「……」

「星?」

目が。

潤んでいた。

「ママ」

「何?」

「綺麗」

胸が。

いっぱいになる。

「……ありがとう」

「ほんと」

星が。

笑う。

「すごく」

「ママっぽい」

私は。

もう一度。

鏡を見る。

ママっぽい。

その言葉が。

嬉しい。

一ノ瀬紗良の。

顔なのに。

ウェディングドレスを。

着ているのは。

ちゃんと。

私。

「これ」

私は。

鏡の中の。

自分を見る。

「好き」

星が。

笑った。

「じゃあ」

「これにしようよ」

「でも」

言いかける。

ほかも。

見たほうが。

似合うもの。

もっと。

「ママ」

「……」

「今」

「好きって」

「言ったよ」

私は。

止まった。

そうだった。

自分が。

好き。

それだけで。

選んでいい。

「……うん」

私は。

笑った。

「これがいい」

◇◇◇

星が。

スマートフォンを。

取り出す。

「写真」

「撮っていい?」

「いいけど」

「陽向には」

「絶対送らないでよ」

「分かってる」

「本当に?」

「本番で」

「泣かせたいから」

「目的そこ?」

星が。

笑いながら。

写真を撮る。

その瞬間。

私も。

笑った。

カシャ。

写真の中。

ウェディングドレス姿の。

私。

そして。

横には。

笑っている。

娘。

一度目の。

結婚式には。

いなかった。

私の。

娘。

それだけで。

これは。

前と同じ。

結婚式ではない。

全く。

新しい。

一日になる。

そう。

思えた。

◇◇◇

ショップを。

出たあと。

星が。

言った。

「ママ」

「何?」

「バージンロード」

胸が。

少し。

止まる。

「誰と」

「歩くの?」

「……」

考えて。

いなかった。

普通なら。

父親。

でも。

今の私には。

その形が。

しっくり。

来ない。

前の夫?

絶対。

違う。

子どもたち?

それも。

素敵。

でも。

私の中で。

何かが。

引っかかる。

「……一人で」

「え?」

星が。

私を見る。

私は。

少しずつ。

自分の気持ちを。

言葉にする。

「一人で」

「歩きたいかも」

「……」

「陽向のところまで」

「自分で」

「行きたい」

星が。

静かに。

聞く。

「ママ」

「誰かに」

「渡してもらうんじゃなくて」

「……」

「私が」

「自分で」

「陽向を選んで」

「歩いていく」

言いながら。

胸の中に。

すとんと。

落ちた。

これだ。

私の。

結婚式。

誰かに。

連れていってもらう。

未来じゃない。

自分で。

選んだ人の。

ところへ。

自分の足で。

歩いていく。

星が。

少し。

目を潤ませて。

笑った。

「いいと思う」

「うん」

「でも」

「何?」

「途中で」

少し。

にやっとする。

「私たちのこと」

「ちゃんと見てね」

胸が。

温かくなる。

「見るよ」

「絶対?」

「絶対」

「五人とも?」

「もちろん」

「パパ来たら?」

少し。

考える。

「……見る」

「うん」

「今まで」

「一緒にいた人たち」

「全部」

「ちゃんと」

「見て」

そして。

私は。

笑った。

「その先の」

「陽向のところに」

「行く」

◇◇◇

その夜。

前の夫から。

メッセージが。

届いた。

短い。

一文。

『結婚式、行くわ』

私は。

しばらく。

画面を。

見つめた。

続けて。

もう一通。

『子どもらも来てほしいみたいやし』

そして。

少しして。

『俺も、ちゃんと見届けたほうがええ気がする』

胸が。

じんわり。

熱くなる。

私は。

返信した。

『ありがとう』

それだけ。

すると。

また。

返ってきた。

『ただし』

「……?」

『泣いても笑うなよ』

思わず。

吹き出した。

『そっちこそ』

送る。

少しして。

『たぶん泣かん』

絶対。

分からない。

私は。

笑った。

◇◇◇

そして。

結婚式の日が。

少しずつ。

近づいていく。

ASTERの。

四人。

五人の。

子どもたち。

子どもたちの。

父親。

事務所の。

人たち。

神崎悠人。

それぞれの。

大切な人たち。

一度目の人生。

二度目の人生。

その両方に。

繋がる人たちが。

一つの場所へ。

集まろうとしている。

そして。

私は。

誰かに。

手を引かれるのではなく。

自分の足で。

バージンロードを。

歩く。

その先には。

天城陽向。

私が。

自分で。

選んだ。

未来。

ただ。

結婚式まで。

あとわずかとなった。

ある日。

ASTERのメンバーから。

陽向へ。

こんな提案が。

持ち上がった。

「披露宴」

「俺ら」

「何かやっていい?」

陽向は。

嫌な予感しかしない顔で。

四人を見た。

「……何する気?」

四人は。

顔を。

見合わせる。

そして。

にやっと。

笑った。

「それは」

「当日まで」

「新郎新婦には」

「内緒」

陽向の顔が。

引きつった。

「絶対」

「ろくなことしないだろ!」

けれど。

そのサプライズが。

結婚式当日。

私と陽向を。

大泣きさせることになるなんて。

このときの私たちは。

まだ。

知らなかった。
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