儚く散った初恋は十二年の時を経て芽吹く 〜犬猿の仲だった御曹司と再会したら溺愛されました〜
知ってしまった事実
(お腹空いた……)
研修を終えて完璧にできる気になっていても、実際その場に立つと、戸惑うしできないことも多い。研修のときの半分も力を出しきれなかったように思う。
(色々と反省すべきことが多いわ……)
結月は己の無能さに、打ちひしがれた。至急、何がいけなかったかを見返して、明日はもっと成長できるように頑張らないと。
「ん?」
もうすぐ自宅というところで、結月はふと美味しそうなにおいに足を止めた。スパイスがきいたエスニックな香り、カレーだ。
ただでさえ空腹なのに、食欲のそそる香りが鼻腔をくすぐって、結月の腹は盛大にぐぅっと鳴った。
「あれ?」
どこから漂ってきたのかと思ったが、どうやら祖母の店からのようだ。でも、もう閉店しているはずなのに。
(明日の仕込みをしているのかしら)
ならば手伝おうと思い、結月がカフェの扉を開けたとき、心地のいい低音ボイスが耳に響く。
「おかえり」
聞き慣れない男性の声がして、結月は弾かれるように顔を上げた。すると、そこには碓氷拓真がいた。
そしてあろうことかカウンターに座ってカレーを食べているのだ。においの原因はこいつだったのか。
(なんでいるのよ!)
「閉店時間を大幅に過ぎているんですけど?」
結月は、警戒心剥き出しで拓真を見つめた。
テーブルの上にはパソコンや数枚の書類なども置かれていて、どうやら仕事をしながら食べているようだ。
「……そんなに忙しいなら、会社に戻ればいいのに。第一、ここで何してんの?」
「忙しくても、透子さんの手伝いをする時間くらい作れます。食べ終わったら会社に戻るから、そんな顔をしないでください。可愛い顔が台無しですよ」
拓真の言葉に、さらに結月は眉根を寄せた。きっと今、苦虫を噛み潰したような顔をしていると思う。
「思ってもないこと言わないで」
結月はふんと鼻を鳴らして顔を背けた。なるべく怖い表情を作ってはいるが、実際はめちゃくちゃ動揺している。結月が胸の前でバッグをかかえたとき、結月のお腹が盛大に鳴った。その音に、一瞬時が止まる。
「~~~~っ!」
消えてしまいたい。
顔を真っ赤にして下唇を噛む結月に、幸い拓真は何も言わなかった。てっきり揶揄われると思ったのに。
結月が固まって動けないでいると、祖母が朗らかに笑いながら厨房から出てきた。
研修を終えて完璧にできる気になっていても、実際その場に立つと、戸惑うしできないことも多い。研修のときの半分も力を出しきれなかったように思う。
(色々と反省すべきことが多いわ……)
結月は己の無能さに、打ちひしがれた。至急、何がいけなかったかを見返して、明日はもっと成長できるように頑張らないと。
「ん?」
もうすぐ自宅というところで、結月はふと美味しそうなにおいに足を止めた。スパイスがきいたエスニックな香り、カレーだ。
ただでさえ空腹なのに、食欲のそそる香りが鼻腔をくすぐって、結月の腹は盛大にぐぅっと鳴った。
「あれ?」
どこから漂ってきたのかと思ったが、どうやら祖母の店からのようだ。でも、もう閉店しているはずなのに。
(明日の仕込みをしているのかしら)
ならば手伝おうと思い、結月がカフェの扉を開けたとき、心地のいい低音ボイスが耳に響く。
「おかえり」
聞き慣れない男性の声がして、結月は弾かれるように顔を上げた。すると、そこには碓氷拓真がいた。
そしてあろうことかカウンターに座ってカレーを食べているのだ。においの原因はこいつだったのか。
(なんでいるのよ!)
「閉店時間を大幅に過ぎているんですけど?」
結月は、警戒心剥き出しで拓真を見つめた。
テーブルの上にはパソコンや数枚の書類なども置かれていて、どうやら仕事をしながら食べているようだ。
「……そんなに忙しいなら、会社に戻ればいいのに。第一、ここで何してんの?」
「忙しくても、透子さんの手伝いをする時間くらい作れます。食べ終わったら会社に戻るから、そんな顔をしないでください。可愛い顔が台無しですよ」
拓真の言葉に、さらに結月は眉根を寄せた。きっと今、苦虫を噛み潰したような顔をしていると思う。
「思ってもないこと言わないで」
結月はふんと鼻を鳴らして顔を背けた。なるべく怖い表情を作ってはいるが、実際はめちゃくちゃ動揺している。結月が胸の前でバッグをかかえたとき、結月のお腹が盛大に鳴った。その音に、一瞬時が止まる。
「~~~~っ!」
消えてしまいたい。
顔を真っ赤にして下唇を噛む結月に、幸い拓真は何も言わなかった。てっきり揶揄われると思ったのに。
結月が固まって動けないでいると、祖母が朗らかに笑いながら厨房から出てきた。