儚く散った初恋は十二年の時を経て芽吹く 〜犬猿の仲だった御曹司と再会したら溺愛されました〜
「おかえりなさい。拓真くんには色々とお世話になっているから、お礼にいつも夕食を作らせてもらっているのよ。結月も食べなさい。拓真くんとケンカをするにしても、腹が減っては戦はできないでしょう」
「別にケンカをしているわけじゃ……」

 喧嘩腰だったことは認めるけれど。
 目の前に置かれた美味しそうなカレーと祖母の笑顔に嫌とは言えず、結月は渋々拓真の席とひとつ間を空けて座った。

 祖母が作ってくれたカレーは野菜の奥深い旨味とスパイスがきいた美味しいチキンカレーだ。

「いただきます」

 手を合わせてひと口ほおばると、舌先にピリッとした刺激を感じる。その瞬間、まろやかな甘みが口いっぱいに広がった。

 じっくり炒められた玉ねぎの凝縮された甘味や旨味、トマトの酸味、そして柔らかい鶏肉と野菜たち。何もかも結月を幸せにしてくれる。

「美味しいよう。おばあちゃんのカレー大好き。うう、幸せ……」

 何せ海外にいたので、祖母の味が恋しくなってもなかなか帰ってこられなかった。だから、また祖母と一緒にいられて、祖母の作るご飯を食べられて嬉しい。

 結月が感動の声を上げると、拓真がフッと笑った。

「相変わらず、結月は美味しそうに食べますね。見ているだけで、こっちも楽しくなります。それに出まかせなんかじゃありません。本当に結月はすごく可愛い」

 そう言って結月の前にグラスに注いだ水を置く拓真に、結月は咳払いをした。

(調子いいこと言っちゃって……)

「私がいない間、祖母のことを色々と手伝ってくれていたみたいでありがとうございました。でももう私がいるから、今後は必要ありません」
「結月ったら、拓真くんに失礼よ。拓真くんは、私やお店のために色々と協力してくれているんだから、過去のことを水に流せとは言わないけれど、追い返さないでほしいわ」

 そう言って、祖母はノートパソコンの画面を見せてくる。アナログな祖母がパソコンを使いこなしているのも驚きだが、何より拓真が導入した発注管理システムに結月は何も言えなくなった。

(すごい……)

 七十六歳の祖母には、昔ながらの方法での在庫確認や発注作業は負担だっただろう。きっとめちゃくちゃ助かったに違いない。
 きっと拓真は、電子機器が苦手な祖母に根気よく教えてくれたのだ。

(そういえば、いつからかビデオ通話をかけてきてくれるようになったっけ)

 近所の人に使い方を教えてもらったと言っていたが、あれは拓真だったのか。
 結月はそれを知って、膝の上で手をぎゅっと握りしめた。
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