儚く散った初恋は十二年の時を経て芽吹く 〜犬猿の仲だった御曹司と再会したら溺愛されました〜
「何?」
「いえ、お前が淹れた茶なんて飲めるかと言われるかもって内心ビクビクしていたんです。気に入ってくれてよかった……」
「何それ。淹れてくれれば飲むわよ。お茶に罪はないもの」
そう言って、またひと口飲む。
こうしてカウンターに二人並んで温かいお茶を飲んでいると、毒気が抜かれていくから不思議だ。
結月は湯呑みの中の淡い黄緑色のお茶を見ながら、小さな声でお礼を言った。
「ありがとう」
「え……」
「ずっとおばあちゃんのことが気になってた。だけど、なかなか帰ってこられないし……遠くにいるから、おばあちゃんが困ってもできることなんて限られている……。きっとあなたが側にいてくれて、おばあちゃん……すごく心強かったと思うわ。本当にありがとう」
この十二年間、何度か祖母に会いに日本に帰ってきてはいた。
でもそういうときは、祖母の店には寄らずに、皆で旅行がてらどこかの旅館に泊まることが多かった。だから拓真がずっと助けてくれていたなんて知らなかった。
(きっと私が言えなくしていたのよね。昔の話をすると嫌がるから……)
結月が深々と頭を下げると、拓真が目を丸くした。そして彼も慌てて頭を下げる。
「俺こそ、ごめんなさい。結月をここに帰ってきづらくしたのは、間違いなく俺です。でも、これからはやり直していきたい。お願いします、チャンスをください」
結月の手を握って必死に謝る拓真に、結月は彼の変化を観察した。
強気で意地悪だった態度は鳴りを潜め、今は不安げに結月の出方を窺っている。大人になった彼はこんな感じなのかと、まじまじと見つめた。
(拓真くん……変わったわね……。でもそりゃそうか……)
正直、こんなにも真摯に謝れる人だとは思わなかった。
拓真と決別してからの十二年間。
それは二人が子どもから大人へと成長した時間でもある。それほどに長い年月――ちゃんと彼と向き合ったことがなかったのだから、変わったというより何も知らなかったのだろう。
「そうね。たまにこうやってお茶を飲みながら話すのも悪くないわね」
「本当ですか?」
「そのかわり、これからも祖母をよろしくね。もちろん私も手伝うけど、あんたのことは私が存分にこき使ってやるから、そのつもりで」
「もちろんです!」
今にも泣き出しそうな顔で喜ぶ拓真に苦笑する。
ここに戻ってくるまで、人は簡単には変われないと決めつけていた。
でも子どもが大人へと育つ時間はあっという間のようで長く貴重だ。祖母が言っていたように身体が成長するように心だって成長する。色々な変化をもたらすだろう。
いつまでも子どものままではいられないのに、ずっと彼は子どものときのままだと勘違いしていた。
(私も大人にならなきゃいけないわね)
「いえ、お前が淹れた茶なんて飲めるかと言われるかもって内心ビクビクしていたんです。気に入ってくれてよかった……」
「何それ。淹れてくれれば飲むわよ。お茶に罪はないもの」
そう言って、またひと口飲む。
こうしてカウンターに二人並んで温かいお茶を飲んでいると、毒気が抜かれていくから不思議だ。
結月は湯呑みの中の淡い黄緑色のお茶を見ながら、小さな声でお礼を言った。
「ありがとう」
「え……」
「ずっとおばあちゃんのことが気になってた。だけど、なかなか帰ってこられないし……遠くにいるから、おばあちゃんが困ってもできることなんて限られている……。きっとあなたが側にいてくれて、おばあちゃん……すごく心強かったと思うわ。本当にありがとう」
この十二年間、何度か祖母に会いに日本に帰ってきてはいた。
でもそういうときは、祖母の店には寄らずに、皆で旅行がてらどこかの旅館に泊まることが多かった。だから拓真がずっと助けてくれていたなんて知らなかった。
(きっと私が言えなくしていたのよね。昔の話をすると嫌がるから……)
結月が深々と頭を下げると、拓真が目を丸くした。そして彼も慌てて頭を下げる。
「俺こそ、ごめんなさい。結月をここに帰ってきづらくしたのは、間違いなく俺です。でも、これからはやり直していきたい。お願いします、チャンスをください」
結月の手を握って必死に謝る拓真に、結月は彼の変化を観察した。
強気で意地悪だった態度は鳴りを潜め、今は不安げに結月の出方を窺っている。大人になった彼はこんな感じなのかと、まじまじと見つめた。
(拓真くん……変わったわね……。でもそりゃそうか……)
正直、こんなにも真摯に謝れる人だとは思わなかった。
拓真と決別してからの十二年間。
それは二人が子どもから大人へと成長した時間でもある。それほどに長い年月――ちゃんと彼と向き合ったことがなかったのだから、変わったというより何も知らなかったのだろう。
「そうね。たまにこうやってお茶を飲みながら話すのも悪くないわね」
「本当ですか?」
「そのかわり、これからも祖母をよろしくね。もちろん私も手伝うけど、あんたのことは私が存分にこき使ってやるから、そのつもりで」
「もちろんです!」
今にも泣き出しそうな顔で喜ぶ拓真に苦笑する。
ここに戻ってくるまで、人は簡単には変われないと決めつけていた。
でも子どもが大人へと育つ時間はあっという間のようで長く貴重だ。祖母が言っていたように身体が成長するように心だって成長する。色々な変化をもたらすだろう。
いつまでも子どものままではいられないのに、ずっと彼は子どものときのままだと勘違いしていた。
(私も大人にならなきゃいけないわね)