儚く散った初恋は十二年の時を経て芽吹く 〜犬猿の仲だった御曹司と再会したら溺愛されました〜
祖父の望み(拓真視点)
――数週間後。
(最近ちょっといい感じじゃないか?)
拓真は、結月のことを思い出して自然と頬が緩んだ。まだ嫌な顔をされたり、冷たかったりするが、無視されない。邪険にされるのは構ってもらえている証だ。
「おはよう」
「おはよう……って、会長。こんなところで何しているんですか?」
締まりのない顔で碓氷文具の専務室に入ると祖父である会長が待ち構えていた。
白髪の髪をオールバックにし、厳しい表情で愛用の杖をつき近寄ってくる祖父に、拓真は身を引き締めた。
いくら祖父と孫といっても、ここは会社。弁えなければならない。だが、祖父は直立する拓真に、満足げな笑みを浮かべた。
「透子さんから聞いたぞ。結月ちゃんと話せているそうじゃないか。どうだ? 仲直りできそうか?」
「そんな簡単にはいきませんよ。でも結月は優しいので、こんな俺でも話してくれます」
肩を竦めてそう答えると、祖父が少し残念そうな顔をした。祖父は、実の孫である拓真には厳しかったが、結月にはとても優しかった。拓真が結月にひどい態度を取り、関係が壊れたときはものすごく叱られたものだ。
でも透子は叱らなかった。
結月が引っ越した日、拓真はどうしたらいいか分からず透子の店に行って、泣き喚いた。
結月への謝罪や後悔。結月を好きな気持ち。泣きすぎて上手には話せなかったが、透子はいつもと変わらない優しい表情で、拓真の話を聞いてくれた。
そして次の日から償いと称して、透子の店に手伝いにくる拓真を、彼女は嫌な顔ひとつせずに受け入れてくれているのだ。
(どうして怒らないんだと聞いたら、拓真くんはいい子だものって笑っていたな)
思い出して、拓真は相好を崩す。彼女のおかげで、どれほど救われているだろうか。
「そうだな、結月ちゃんは優しい。きっと愚かなお前の罪を許してくれるだろう」
拓真は祖父の口ぶりに、彼の言いたいことを察知した。
「会長は、結月を俺の嫁に迎えたいと考えているのでしょうが、それは不可能です。俺がしたことをご存知ですよね? 許されたとしても、結婚なんてできるわけがない」
「……もちろん。無理にとは言わんさ。私が勝手にそう望んでいるだけだ。だが、お前は結月ちゃんのことが好きなのだろう?」
「そ、それは……」
祖父の指摘に拓真が口籠ると、祖父が鼻で笑った。未だに、あの日の後悔から前に進めない拓真を見透かしているようだ。
「一人前の顔をしても、まだまだ青二才だな」
「……」
返す言葉が見つからず、専務室を出ていく祖父の背中を黙って見送る。パタンとドアが閉まる音が室内に響いて、拓真は力なくソファに座り込んだ。
祖父は……親友である結月の祖父と、いずれ孫が生まれたら結婚させたいと約束していたそうだ。といっても、酒の上の軽口で、実際婚約を交わしたわけではない。が、きっと祖父は諦めきれないのだ。
(俺だって……結月が受け入れてくれるなら嬉しいよ。でもそんなことを望む資格なんてあるわけないだろ)
(最近ちょっといい感じじゃないか?)
拓真は、結月のことを思い出して自然と頬が緩んだ。まだ嫌な顔をされたり、冷たかったりするが、無視されない。邪険にされるのは構ってもらえている証だ。
「おはよう」
「おはよう……って、会長。こんなところで何しているんですか?」
締まりのない顔で碓氷文具の専務室に入ると祖父である会長が待ち構えていた。
白髪の髪をオールバックにし、厳しい表情で愛用の杖をつき近寄ってくる祖父に、拓真は身を引き締めた。
いくら祖父と孫といっても、ここは会社。弁えなければならない。だが、祖父は直立する拓真に、満足げな笑みを浮かべた。
「透子さんから聞いたぞ。結月ちゃんと話せているそうじゃないか。どうだ? 仲直りできそうか?」
「そんな簡単にはいきませんよ。でも結月は優しいので、こんな俺でも話してくれます」
肩を竦めてそう答えると、祖父が少し残念そうな顔をした。祖父は、実の孫である拓真には厳しかったが、結月にはとても優しかった。拓真が結月にひどい態度を取り、関係が壊れたときはものすごく叱られたものだ。
でも透子は叱らなかった。
結月が引っ越した日、拓真はどうしたらいいか分からず透子の店に行って、泣き喚いた。
結月への謝罪や後悔。結月を好きな気持ち。泣きすぎて上手には話せなかったが、透子はいつもと変わらない優しい表情で、拓真の話を聞いてくれた。
そして次の日から償いと称して、透子の店に手伝いにくる拓真を、彼女は嫌な顔ひとつせずに受け入れてくれているのだ。
(どうして怒らないんだと聞いたら、拓真くんはいい子だものって笑っていたな)
思い出して、拓真は相好を崩す。彼女のおかげで、どれほど救われているだろうか。
「そうだな、結月ちゃんは優しい。きっと愚かなお前の罪を許してくれるだろう」
拓真は祖父の口ぶりに、彼の言いたいことを察知した。
「会長は、結月を俺の嫁に迎えたいと考えているのでしょうが、それは不可能です。俺がしたことをご存知ですよね? 許されたとしても、結婚なんてできるわけがない」
「……もちろん。無理にとは言わんさ。私が勝手にそう望んでいるだけだ。だが、お前は結月ちゃんのことが好きなのだろう?」
「そ、それは……」
祖父の指摘に拓真が口籠ると、祖父が鼻で笑った。未だに、あの日の後悔から前に進めない拓真を見透かしているようだ。
「一人前の顔をしても、まだまだ青二才だな」
「……」
返す言葉が見つからず、専務室を出ていく祖父の背中を黙って見送る。パタンとドアが閉まる音が室内に響いて、拓真は力なくソファに座り込んだ。
祖父は……親友である結月の祖父と、いずれ孫が生まれたら結婚させたいと約束していたそうだ。といっても、酒の上の軽口で、実際婚約を交わしたわけではない。が、きっと祖父は諦めきれないのだ。
(俺だって……結月が受け入れてくれるなら嬉しいよ。でもそんなことを望む資格なんてあるわけないだろ)