儚く散った初恋は十二年の時を経て芽吹く 〜犬猿の仲だった御曹司と再会したら溺愛されました〜
「拓真くん、この機会に結月に拓真くんの気持ちをもっと伝えたらどう? 拓真くんは、結月と再会して今何がしたい?」

 柔らかく微笑みながら問いかける祖母に、拓真はとても真剣な表情で結月を見据える。

「もし許されるなら、俺が馬鹿なことをしなかったら……結月とできたことがしたいです」
「私とできたこと?」
「たとえば……挨拶や他愛ない話をしたり、遊びに行ったり、もっといっぱい仲良くしたかった……」
「そう。じゃあ次のお休みの日に一緒に出掛けてきたらどうかしら?」
「え?」

 祖母の提案に驚くと、彼女がふふっと笑う。

「挨拶や話はもう普通にできているし、あとは出掛けるだけよ。そういえば、結月用のマグカップが欲しいのよね。結月もお気に入りのマグカップがあったほうがいいでしょう?」
「それはそうだけど……それくらいなら私一人でも……あ、えーっと、分かったわ。拓真くんと一緒に買いに行くわ」

 断ろうと思ったが、祖母と拓真の縋るような視線に耐えきれず、結月はやむを得ず首肯した。

(私ったらつい頷いちゃった……)

 悲しみや怒りの気持ちは、本人と向き合うと持続しないのだなと、結月はこの数カ月で思い知った。それは拓真の態度が平身低頭なせいもあるのだろうけれど、謝っている相手にきつく当たり続けられるほど、結月の心は強くなかったようだ。

「ありがとうございます。横浜の元町に、結月が気に入りそうな店を知っているんです。案内させてください」
「……で、でも拓真くんは平日は仕事なんじゃないの? 私、土曜日や日曜日は休めないわよ」
「そこは調整するから大丈夫です」

 些細なことでこんなにも喜ぶ拓真に、結月は眉尻を下げた。まるで、飼い主に褒めてもらった忠犬のようだ。

「ね、言ったでしょう。拓真くんはいい子なのよ」
「そうね……少なくとも昔とは違うんだなって分かったわ」

 拓真は結月と接するとき、すごく緊張していて気遣ってくれているのがよく伝わってくる。

 今後もきっと楽しいことばかりではないかもしれない。
 衝突することもあるだろう。
 でも今の拓真となら話し合えるから大丈夫だと、結月は素直にそう思えた。
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