儚く散った初恋は十二年の時を経て芽吹く 〜犬猿の仲だった御曹司と再会したら溺愛されました〜

再会

 朝露でキラキラと煌めいている大きな御神木を目にとめて、結月はささくれだっていた心が少し落ち着いた。

(悲しいことばかりじゃなくて楽しいことも、たくさんあったわよね)

 つらい思い出だけを数えるのは、もうやめにしよう。

 結月は拝殿に近寄り賽銭箱にお金を入れて、姿勢を正し二回深くお辞儀をした。そして胸の前で二回手を叩き、『今度はよい思い出がたくさん出来ますように』とお祈りする。

 祈り終えニコリと微笑んでからもう一度深くお辞儀をしたとき、背後から「日向結月?」と呼ぶ声が聞こえた。

「……!」

 おそるおそる振り返ると、そこには目鼻立ちの整った男がとても驚いた表情で立っていた。幼さが消え、キリリとした眉にスッと通った鼻筋。精悍な顔つきになった。

 十二年も経っているので分からないと高を括っていたのに、その考えが一瞬でどこかに飛んでいく。
 訊ねなくても分かってしまった。碓氷拓真だ。

 頬を撫でる春の風が、ぞくりと結月の身体を震わせた。口の中に苦い味が広がっていく。

「やっぱりそうだ。結月ですよね?」

 結月が何も答えないことに焦れたのか、拓真がもう一度名前を呼んだ。目の前に現れた――かつての幼なじみを前に、なんと答えたらいいか分からず結月は視線を彷徨わせる。

「……」

 そんな結月の反応を見て、彼はひどく残念そうにこちらを見つめた。
 もし会えたらなんて考えていたが、実際再会すると戸惑いが勝って、どう接したらいいか分からない。文句を言ってやりたかったはずなのに。

「俺、碓氷拓真です。駅前の碓氷文具の息子なんだけど、その様子じゃ俺のこと覚えていませんか?」

 距離をはかりかねているのか、敬語で話しかけてくる拓真に、結月は一歩さがり、彼の様子を窺った。

祖父(じい)さんたちが仲良くて、俺らも……」
「あんなことがあったのに忘れられるわけないでしょう」

 拓真の言葉を遮り睨みつける結月をジッと見つめて、彼は分かりやすく安堵の息をついた。

「ああ、覚えていてくれて良かった」
「……じゃあ私はこれで失礼します」
「待って……!」

 軽く会釈をして拓真の横をすり抜けようとしたとき、がしりと腕を掴まれる。先ほど名前を呼ばれたとき以上の驚きが胸を占めて、彼をこわごわと見上げた。
 その力強さは昔感じた怖さを呼び起こした。

「以前はすみませんでした。俺が子どもだったせいで、いっぱい傷つけましたよね? 本当に俺は自分のことばかりで、結月にひどいことばかり……後悔しても無駄なのは分かっていても、どうしても結月に謝りたくて……」
「そう、ですか」
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