僕らのノイズ ※最後の願いは、よく考えたうえで送信してください。
 人間は、どうしようもないくらい、脆くて、弱くて、壊れやすい生きものだから、独りになるのだけは避けようと、あらゆる手段を使って、人と繋がろうとする。一人になりたいくせに、独りでいることは避けたがる。

 そのことに、やっと、気がついたから。

「ほんと、昔からあんたのそういうところが……大嫌い」
「……そういうところ、って」

 朋美がぷはっと吹き出し、あはは、と声を出して笑う。
 私がうまく理解できないで混乱しかけていると、朋美がその場で座って「あんたも座りなよ。今更、見下ろされたくない」と私も同じように床に座るよう、促してきた。

「一言でいえば、うちより先に行って理解してるところ。あ、勉強じゃないよ? それならうちのほうが成績良いし? もっとこう……生き方っていうか」

 朋美は不器用に手をひらひらさせながら話す。話しながら、小さい頃みたいにいろんなことを話している感覚で、懐かしくなる。

「生き方……?」

 首をかしげる。
 私は朋美に言われたその言葉を、頭の中で浮かばせた。

「うちは、あんたが……夕夏が羨ましかった。だから、あの事故の話を知ったとき、正直『ざまあみろ、調子乗ってるからだ』って思ったよ。でも、夕夏が復帰するって知らされて、なぜか、その気持ちを隠しきれない気がした。だから、この際、無理やり退部させようと思った。それで、那月たちを使ってさ」

 朋美が泣きながら笑っている。それなのに、どうしても、哀しそうに見えてしまって、まだ「どうにかしたい」と思う。助けてあげたい、と思ってしまう。
 私は、タツさんが読み上げていた内容と、私がずっと思い悩んで最後に願ったことを思い出した。そして、両手のひらを床につき、前のめりになって口を開けた。

「もう、やめない?」
「え?」
「私、自分だけの力で変われるほど、強くないから、その……」

 私は言い出す勇気が、あと一歩足りなくて俯きそうになる。それでも、ぐっと踏みとどまって、顔を上げて朋美の瞳をまっすぐ見つめた。

「一緒に、生きてほしいの」

 口が、自然とそう伝えていた。
 不思議と、朋美も同じことを考えているような気がして、私はもう、自分を偽ることはできないと思った。
 これが正しいかはわからないけれど、今は、これ以外の言葉が浮かんでこないから。

「相変わらずだっての、そういうところ!」

 朋美は口角を上げ、ニヤッと笑った。

「昔から、うちらは結局同じことを考えちゃうんだね。……悔しいけど、認めるわ」

 私は二回頷いた。
 私たちは、二人で一緒にいる時間が、誰よりも一番長くて、あまりにも長すぎて。正反対の性格をした人間、血のつながりもないのに、まるで双子のように似ている部分もあって。気づいたら、私たちは同じことを考えている。

 今になってみれば、進路がここまで同じだったのも、ただの偶然ではなくて、必然、そうなる運命だったんだろうとさえ思う。むしろ、そうであってほしい。

「でもさ、すぐには無理かもしんない」

 朋美が立ちあがる。

「うちはきっと、これからも夕夏にイライラするだろうし、大嫌いな部分は大嫌いなまま。……無理でしょ? 嫌いなのに、それを破って好きになるなんて」

 私は何も言い返せない。その通りだと思ったから。

「それでも、……夕夏が『一緒に』って言うならさ」

 朋美が左手を私の目の前に差し出してきた。

「ほら、ホームルーム始まっちゃうから、行くよ」

 ほら、早く。そう急かされて、私は朋美の手に引っ張られて立ち上がり、音楽室を後にした。
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