僕らのノイズ ※最後の願いは、よく考えたうえで送信してください。

55001 55003  55004 55010 55011  55012
55022 55025  55028 55030 55046  55055
55068 55071  55073 55082 55088  55094
55101 55105  55111 55120 55122  55125
55130 55131  55132 55133 55140 55152
55155 55163 55170 55174 55181 55189
55190 55191 55198 55200 55201 55209
55211 55213 55220 55223 55224 55230
55233 55240 55248 55……

「あ、――」

 私は、何度も、受験票と掲示板の番号を照らし合わせて、顔を行き来させた。

「あっ、た……あった!」

 ぶわっとこみ上げてくる涙で、視界が揺れる。

「受かった……」

 新鮮な酸素が、血流に乗って、全身にゆっくり流れていく。
 だんだんと、周囲から、同じように合格した人たちの黄色い声が聞こえてくる。

 そうだ、書類。受け取りに行かないと。
 やけに冷静になった頭で人混みをかきわけて、係員の案内に従い、職員さんから「合格おめでとうございます」という声と共に、ドンっという衝撃が両手の平に伝わる。分厚くてとても重い桜色の封筒を渡された。

 私は大学構内にあるベンチに腰を掛けて、さっきの人混みを遠くに見ながら、スマホで朋美を呼び出した。
 親でも、先生でもなく、朋美に一番に報告したい理由は、ただ一つ。

「朋美、私、私ね!」

 早く結果を言いたいのに、口がもつれてうまく言い出せない。

『落ち着きなって、全部聞くから』

 私を慰める朋美の声が、すごく優しくて、だけどやっぱり少しだけ鋭くて、くすっと笑みがこぼれる。
 私、朋美の声が大好きだ。

「私、受かったよ!」

 ベンチから立ち上がって、膝の上に置いていた封筒が、地面に重い音をさせて滑り落ちた。

「受かって、落ちた」
『え?』
「あぁ、えっと、受かったんだけど、落ちちゃって、ちょっと待って」

 朋美の『大丈夫?』がスピーカーから微かに聞こえる。
 私はしゃがんで、地面に落ちてしまった封筒を広い、バッグにしまった。
 再びスマホを耳に当てる。

「あの、大学は、受かった。で、落ちたっていうのは……書類で」
『……もう! 驚かせないでよね』

 もう、とため息交じりの朋美の声に、少しばかり、罪悪感を覚える。

『おめでと、夕夏』

 一番に言いたかった、言われたかった。

「ありがとう、朋美」

 その場に一緒にいるわけではないのに、隣で手を取り合って喜びあっている、そんな気がして口が緩む。

『そうそう、夕夏』

 朋美が何かを思い出したようで、電話の向こうで何やらガサゴソと紙を取り出しているような音が聞こえてくる。

『卒業式の次の日、今年も吹奏楽部と筝曲部、合唱部で合同定期演奏会やるんだけど、参加しない?』

 一瞬、周りの歓声や桜の木々が風に揺れる音が聞こえなくなる。

「でも、私、退部した身だよ、それに」
『それに?』
「私、歌えないかもしれない」

 仮想空間で、大会に出られたのに、ソロを歌えなくて、那月が代わりに歌ってくれたことを思い出していた。

『もしそうなってもさ、また一緒に歌えばいいじゃん? それに、……あのときの事故のあと、代わりを立てていなかった理由、うち、先生に聞いてみたんだよね』
「え?」

 朋美の話が理解できない。

「理由、あったの?」
『らしいよ、それ聞いて納得したわ。てか、せざるをえなかった。だから、他のみんなにも伝えてある』
「みんなって……?」
『合唱部、全員』
「みんなは……なんて言ってるの?」

 私はそれ以上聞きたくなくて、電話を切りたくなった。片手に持っているスマホをぎゅっと握りしめる。指と指の間に、僅かながらも汗が滲んでいく。

『一緒に歌いたいって』

 空を見上げると、さっきまで空を覆っていた雲の隙間から、一筋の光が差し込んできていた。
 あれが" 天使のはしご " と呼ばれていることを思い出した。
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