僕らのノイズ ※最後の願いは、よく考えたうえで送信してください。
「まあ、なんでもいいけれど……どうも佐々木さんは、というか、この学科にくる学生のうち、半分弱が、ね……」

 何かを言いたげに口をもごもごさせている教授を目の前に、私の頭の中は、混乱を極める。

「誰かを救いたい、助けたいって思うのは純粋に素敵なことだとは思う。けれど……」

 私ははっきり結論を言ってくれない教授に、心のどこかでイライラしてしまう。
 鬼のくせに、どうしてこういうときにはスパッと言ってくれないのか。

「誰かを助けたいとは言いつつ、本当は、他の誰でもない、自分自身を救いたいんじゃないかなって思うの」

 佐々木さん、あなたもじゃない?
 そう言われて、さっきまで感じていたはずのイライラが、すうっとどこかへ消えてしまいそうになる。

 認めたくない。
 私が、私を、 " 助けたい " ? " 救いたい " ? そんなわけ――。

「それ自体をおかしなことだと私は思わない。……思えるわけないのよ。私も、心理師になる前はそうだったから。だから」
「だから、なんですか」

 教授を責めたくなる。責めてしまいそうになる。
 そこまで言って、どうしてまだはっきりと言ってくれないのか、わからない。
 鬼は、いつものように金棒を振り回すような雰囲気を失っているように見えた。

「うまく言えないけれど……自分を救うことと誰かを助けることは、実際には全く別の問題なの」

 教授は、じっと私の目を見つめてくる。

「もっと言えば、自分を救うために誰かを利用するなんてこと、あまりに、残酷」

 私はそう言われた瞬間、頭のどこかで、タツさんの話を思い出していた。
 タツさんの声が、耳の奥で突き抜けるようだった。

「救世主願望、メサイア・コンプレックスとも言うらしいんだけどね、これは」

 教授が両腕を組んで、微笑みながら、悩んだような顔を見せてくる。
< 69 / 74 >

この作品をシェア

pagetop