『十五年越しの願いは、歪んだ家族に砕かれて――身ごもり秘書は幼馴染CEOの重すぎる執着愛から逃げられない』
佐知子さんは静かに頷いた。
「それが一番ですね」
それ以上。
遼河さんとのことも。
この先どうするつもりなのかも聞かなかった。
今はまだ。
そこまで問い詰める時ではないと分かってくれているのだろう。
「今日はもともとお休みでしたね」
「うん」
「でしたら、午前中に診ていただけるところを探しましょう」
「そうする」
「私もご一緒します」
「そこは一人で行く」
「綾乃お嬢様」
「大丈夫」
少しだけ笑った。
「まず、自分で聞きたいの。ちゃんと自分の耳で」
しばらく私を見ていた佐知子さんは。
やがて諦めたように息を吐いた。
「分かりました。ただし、終わったらご連絡ください」
「はい」
「すぐに」
「はいはい」
「返事だけは昔から立派なんですから」
「朝から一言多いよ」
ようやく。
いつもの朝らしい空気が戻った。
*
診療開始を待って電話をすると。
幸い、その日の午前中に診てもらえることになった。
受付を済ませ、待合室の椅子へ座る。
周りには、大きなお腹をした女性がいた。
隣に座る夫と笑いながら話している人もいれば。
小さな子どもの手を引いた母親もいる。
今までなら。
ただ目に入るだけだった景色。
でも今日は。
何もかもが少し違って見えた。
――私も、これから?
無意識に、お腹へ手を置く。
まだ見た目には何も変わらない。
それでも。
もしかしたら。
これから何度もここへ通って。
少しずつ身体が変わって。
いつか。
この子を抱く日が来るのかもしれない。
そこまで考えて。
急に怖くなった。
まだ何も確定していないのに。
こんなに期待してしまっていいのだろうか。
そんな不安まで込み上げてきた頃。
名前を呼ばれた。
診察室へ入り。
問診を受け。
検査をして。
診察台へ上がる。
医師がモニターを確認したあと、こちらへ顔を向けた。
「画面、見えますか?」
「……はい」
言われるまま、モニターを見る。
医師が画面の一角を指した。
「ここに赤ちゃんが見えますよ」
「……これが?」
思わず画面へ目を凝らした。
小さい。
本当に。
小さい。
まだ。
言われなければ、私にはどこがどうなっているのか分からないくらいだった。
「今、一生懸命、心臓を動かして元気に育っていますよ」
「それが一番ですね」
それ以上。
遼河さんとのことも。
この先どうするつもりなのかも聞かなかった。
今はまだ。
そこまで問い詰める時ではないと分かってくれているのだろう。
「今日はもともとお休みでしたね」
「うん」
「でしたら、午前中に診ていただけるところを探しましょう」
「そうする」
「私もご一緒します」
「そこは一人で行く」
「綾乃お嬢様」
「大丈夫」
少しだけ笑った。
「まず、自分で聞きたいの。ちゃんと自分の耳で」
しばらく私を見ていた佐知子さんは。
やがて諦めたように息を吐いた。
「分かりました。ただし、終わったらご連絡ください」
「はい」
「すぐに」
「はいはい」
「返事だけは昔から立派なんですから」
「朝から一言多いよ」
ようやく。
いつもの朝らしい空気が戻った。
*
診療開始を待って電話をすると。
幸い、その日の午前中に診てもらえることになった。
受付を済ませ、待合室の椅子へ座る。
周りには、大きなお腹をした女性がいた。
隣に座る夫と笑いながら話している人もいれば。
小さな子どもの手を引いた母親もいる。
今までなら。
ただ目に入るだけだった景色。
でも今日は。
何もかもが少し違って見えた。
――私も、これから?
無意識に、お腹へ手を置く。
まだ見た目には何も変わらない。
それでも。
もしかしたら。
これから何度もここへ通って。
少しずつ身体が変わって。
いつか。
この子を抱く日が来るのかもしれない。
そこまで考えて。
急に怖くなった。
まだ何も確定していないのに。
こんなに期待してしまっていいのだろうか。
そんな不安まで込み上げてきた頃。
名前を呼ばれた。
診察室へ入り。
問診を受け。
検査をして。
診察台へ上がる。
医師がモニターを確認したあと、こちらへ顔を向けた。
「画面、見えますか?」
「……はい」
言われるまま、モニターを見る。
医師が画面の一角を指した。
「ここに赤ちゃんが見えますよ」
「……これが?」
思わず画面へ目を凝らした。
小さい。
本当に。
小さい。
まだ。
言われなければ、私にはどこがどうなっているのか分からないくらいだった。
「今、一生懸命、心臓を動かして元気に育っていますよ」