『十五年越しの願いは、歪んだ家族に砕かれて――身ごもり秘書は幼馴染CEOの重すぎる執着愛から逃げられない』
指された場所を見る。

小さな身体の中で。

本当に小さく。

それでも。

確かに動いているものがあった。

ピコ、ピコ、と。

「……動いてる」

思ったより。

ずっと小さな声しか出なかった。

「ええ。ちゃんと動いていますよ。大きさも一・五センチくらい。ちょうど八週くらいですね。経過も順調です」

医師が柔らかく笑った。

「おめでとうございます」

返事ができなかった。

画面から。

目が離せない。

――これが、赤ちゃん。

昨日まで。

私にとって妊娠は、二本の線だった。

いるかもしれない。

そう思っていただけだった。

でも。

今は違う。

目の前で。

小さな身体が一生懸命、心臓を動かしている。

生きている。

私の中で。

本当に。

「……赤ちゃん……」

呟いた瞬間。

視界が滲んだ。

泣くつもりなんてなかった。

確認して。

それから考えようと思って来ただけだった。

なのに。

あんなに小さな命が。

生きようとしている姿を見たら。

昨日まで自分の中で渦巻いていた不安も。

戸惑いも。

全部まだそこにあるのに。

その上から。

別の感情が大きく重なった。

嬉しい。

それだけは。

もう誤魔化せなかった。

「……元気に育ってるんですね」

ようやく言葉にすると。

医師はもう一度頷いた。

「はい。今のところ、とても順調ですよ」

その一言が。

何よりも嬉しかった。



病院を出たあとも。

すぐには帰る気になれなかった。

少し離れた場所で立ち止まり。

バッグからエコー写真を取り出す。

「……可愛い、か」

先生に言われた言葉を思い出して。

小さく笑った。

正直。

まだどこが顔なのかも、よく分からない。

それなのに。

しばらく眺めているうちに。

胸の奥がじんわり温かくなっていく。

「……うん。可愛い」

誰に聞かせるでもなく。

そう言った。

まだ会ったこともない。

声も聞いたことがない。

抱いたことなんて。

もちろんない。

それでも。

もう守りたいと思っている。

「ちゃんと、生きてるんだね」

お腹へ手を添える。

昨日は。

少しだけ考える時間をちょうだい、と言った。

今日は違った。

「元気に育ってね」

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