『十五年越しの願いは、歪んだ家族に砕かれて――身ごもり秘書は幼馴染CEOの重すぎる執着愛から逃げられない』
第十三話 ――芽生えた小さな命と、二人で選ぶ未来――
父と志水さんを見送ったあとも、私はしばらく玄関の前に立っていた。
扉が閉まっただけなのに。
部屋の中から、一気に音が消えたように感じる。
今日聞いたことを、まだ全部整理できていない。
父が帰ってきた。
慎ちゃんが六年半前から、事件の一端を知っていた。
しかも。
自分の力で。
ずっと語学留学だと思っていたその裏で。
慎ちゃんもまた、守られていた。
そして今は。
お母さんのところにいる。
会いたい。
顔を見て。
どうして黙ってたの、と文句を言いたい。
でも。
それは全部終わってからだ。
「綾乃お嬢様」
振り返ると、佐知子さんが時計へ目をやった。
「では、私も今日はこれで失礼いたしますね」
「あ……もうこんな時間」
「旦那様がお戻りになる日ですもの。今日くらいは構いませんよ」
「ごめんね。遅くまで」
「謝らなくて結構です」
そう言って微笑んだあと。
佐知子さんの視線が、ほんの一瞬だけ私のお腹へ落ちた。
見逃さなかった。
「……何?」
「何も」
「絶対、何か言いたい顔してる」
「うふふ」
「ほら」
佐知子さんは楽しそうに笑ったあと。
少しだけ声を柔らかくした。
「無理はなさらないでくださいね」
「分かってる」
「それと」
「何?」
「藤和様には、きちんとお話しするんですよ」
「……分かってます」
佐知子さんは満足そうに頷いた。
「では、お先に失礼いたします」
「今日はありがとう」
「どういたしまして」
玄関まで見送り。
扉を閉める。
今度こそ。
部屋に本当の静けさが戻った。
扉が閉まっただけなのに。
部屋の中から、一気に音が消えたように感じる。
今日聞いたことを、まだ全部整理できていない。
父が帰ってきた。
慎ちゃんが六年半前から、事件の一端を知っていた。
しかも。
自分の力で。
ずっと語学留学だと思っていたその裏で。
慎ちゃんもまた、守られていた。
そして今は。
お母さんのところにいる。
会いたい。
顔を見て。
どうして黙ってたの、と文句を言いたい。
でも。
それは全部終わってからだ。
「綾乃お嬢様」
振り返ると、佐知子さんが時計へ目をやった。
「では、私も今日はこれで失礼いたしますね」
「あ……もうこんな時間」
「旦那様がお戻りになる日ですもの。今日くらいは構いませんよ」
「ごめんね。遅くまで」
「謝らなくて結構です」
そう言って微笑んだあと。
佐知子さんの視線が、ほんの一瞬だけ私のお腹へ落ちた。
見逃さなかった。
「……何?」
「何も」
「絶対、何か言いたい顔してる」
「うふふ」
「ほら」
佐知子さんは楽しそうに笑ったあと。
少しだけ声を柔らかくした。
「無理はなさらないでくださいね」
「分かってる」
「それと」
「何?」
「藤和様には、きちんとお話しするんですよ」
「……分かってます」
佐知子さんは満足そうに頷いた。
「では、お先に失礼いたします」
「今日はありがとう」
「どういたしまして」
玄関まで見送り。
扉を閉める。
今度こそ。
部屋に本当の静けさが戻った。