『十五年越しの願いは、歪んだ家族に砕かれて――身ごもり秘書は幼馴染CEOの重すぎる執着愛から逃げられない』
*
遼河さんが来たのは、それからしばらく経ってからだった。
チャイムが鳴った瞬間。
分かっていたはずなのに、心臓が大きく跳ねた。
玄関へ向かい。
一度深く息を吸ってから、扉を開ける。
「お疲れ様」
私が先に言う。
遼河さんは、挨拶を返すより先にじっと私の顔を見た。
「……何?」
「何があった」
いきなりだった。
「何で第一声がそれなの」
「お前が自分から“会えますか”なんて送ってきたからだ」
「私だって送ることくらいあります」
「滅多にない」
「……まあ」
否定できない。
遼河さんは靴を脱ぎながらも、まだこちらを見ている。
「体調は?」
「大丈夫」
「何かあったんだろ」
「それは……あったけど」
「何だ」
早い。
本当に。
この人には隠し事が向いていない。
リビングへ入り。
二人でソファへ座った。
いきなりエコー写真を出す勇気は。
まだなかった。
まず。
今日、父が戻ってきたことを話した。
「今日ね。お父様が来たの」
遼河さんの表情が、わずかに変わった。
「そうか」
「あんまり驚かないね」
「そろそろとは聞いていた」
「今日だってことは?」
「知らない」
「やっぱり」
少し息を吐く。
「痩せてたけど、元気そうだった。顔見たら……なんか、やっと帰ってきたんだなって思った」
遼河さんは何も挟まず。
静かに聞いていた。
「それでね。慎ちゃんのことも聞いた」
今度は。
遼河さんの表情が少しだけ真剣になった。
「宏輝さん、慎二のことまで話したのか」
「……それも知ってたの?」
「あいつが国外にいる理由はな。全部じゃない」
「もう、本当にみんなして」
腹が立つ。
でも。
その裏で自分を守ろうとしてくれていたことも。
今は分かっている。
「……でも」
私は遼河さんを見る。
「ありがとう」
「何が」
「私の知らないところでも、ちゃんと守ってくれてたこと」
遼河さんはすぐには答えなかった。
少しだけ視線を伏せ。
それから、何でもないことのように言った。
「当たり前だろ」
「そういう言い方すると思った」
「他に何て言えばいい」
「もう少し感動的なこととか」
「必要か?」
「……いらない」
思わず笑った。
この人は。
こういう人だ。
大事なことほど。
大げさに言わない。
でも。
その裏で誰よりも動いている。
それが今なら分かる。
笑いが静かに途切れたあと。
遼河さんが、もう一度私の顔を見た。
「それで?」
「……何が?」
「まだある」
遼河さんが来たのは、それからしばらく経ってからだった。
チャイムが鳴った瞬間。
分かっていたはずなのに、心臓が大きく跳ねた。
玄関へ向かい。
一度深く息を吸ってから、扉を開ける。
「お疲れ様」
私が先に言う。
遼河さんは、挨拶を返すより先にじっと私の顔を見た。
「……何?」
「何があった」
いきなりだった。
「何で第一声がそれなの」
「お前が自分から“会えますか”なんて送ってきたからだ」
「私だって送ることくらいあります」
「滅多にない」
「……まあ」
否定できない。
遼河さんは靴を脱ぎながらも、まだこちらを見ている。
「体調は?」
「大丈夫」
「何かあったんだろ」
「それは……あったけど」
「何だ」
早い。
本当に。
この人には隠し事が向いていない。
リビングへ入り。
二人でソファへ座った。
いきなりエコー写真を出す勇気は。
まだなかった。
まず。
今日、父が戻ってきたことを話した。
「今日ね。お父様が来たの」
遼河さんの表情が、わずかに変わった。
「そうか」
「あんまり驚かないね」
「そろそろとは聞いていた」
「今日だってことは?」
「知らない」
「やっぱり」
少し息を吐く。
「痩せてたけど、元気そうだった。顔見たら……なんか、やっと帰ってきたんだなって思った」
遼河さんは何も挟まず。
静かに聞いていた。
「それでね。慎ちゃんのことも聞いた」
今度は。
遼河さんの表情が少しだけ真剣になった。
「宏輝さん、慎二のことまで話したのか」
「……それも知ってたの?」
「あいつが国外にいる理由はな。全部じゃない」
「もう、本当にみんなして」
腹が立つ。
でも。
その裏で自分を守ろうとしてくれていたことも。
今は分かっている。
「……でも」
私は遼河さんを見る。
「ありがとう」
「何が」
「私の知らないところでも、ちゃんと守ってくれてたこと」
遼河さんはすぐには答えなかった。
少しだけ視線を伏せ。
それから、何でもないことのように言った。
「当たり前だろ」
「そういう言い方すると思った」
「他に何て言えばいい」
「もう少し感動的なこととか」
「必要か?」
「……いらない」
思わず笑った。
この人は。
こういう人だ。
大事なことほど。
大げさに言わない。
でも。
その裏で誰よりも動いている。
それが今なら分かる。
笑いが静かに途切れたあと。
遼河さんが、もう一度私の顔を見た。
「それで?」
「……何が?」
「まだある」