『十五年越しの願いは、歪んだ家族に砕かれて――身ごもり秘書は幼馴染CEOの重すぎる執着愛から逃げられない』


遼河さんが来たのは、それからしばらく経ってからだった。

チャイムが鳴った瞬間。

分かっていたはずなのに、心臓が大きく跳ねた。

玄関へ向かい。

一度深く息を吸ってから、扉を開ける。

「お疲れ様」

私が先に言う。

遼河さんは、挨拶を返すより先にじっと私の顔を見た。

「……何?」

「何があった」

いきなりだった。

「何で第一声がそれなの」

「お前が自分から“会えますか”なんて送ってきたからだ」

「私だって送ることくらいあります」

「滅多にない」

「……まあ」

否定できない。

遼河さんは靴を脱ぎながらも、まだこちらを見ている。

「体調は?」

「大丈夫」

「何かあったんだろ」

「それは……あったけど」

「何だ」

早い。

本当に。

この人には隠し事が向いていない。

リビングへ入り。

二人でソファへ座った。

いきなりエコー写真を出す勇気は。

まだなかった。

まず。

今日、父が戻ってきたことを話した。

「今日ね。お父様が来たの」

遼河さんの表情が、わずかに変わった。

「そうか」

「あんまり驚かないね」

「そろそろとは聞いていた」

「今日だってことは?」

「知らない」

「やっぱり」

少し息を吐く。

「痩せてたけど、元気そうだった。顔見たら……なんか、やっと帰ってきたんだなって思った」

遼河さんは何も挟まず。

静かに聞いていた。

「それでね。慎ちゃんのことも聞いた」

今度は。

遼河さんの表情が少しだけ真剣になった。

「宏輝さん、慎二のことまで話したのか」

「……それも知ってたの?」

「あいつが国外にいる理由はな。全部じゃない」

「もう、本当にみんなして」

腹が立つ。

でも。

その裏で自分を守ろうとしてくれていたことも。

今は分かっている。

「……でも」

私は遼河さんを見る。

「ありがとう」

「何が」

「私の知らないところでも、ちゃんと守ってくれてたこと」

遼河さんはすぐには答えなかった。

少しだけ視線を伏せ。

それから、何でもないことのように言った。

「当たり前だろ」

「そういう言い方すると思った」

「他に何て言えばいい」

「もう少し感動的なこととか」

「必要か?」

「……いらない」

思わず笑った。

この人は。

こういう人だ。

大事なことほど。

大げさに言わない。

でも。

その裏で誰よりも動いている。

それが今なら分かる。

笑いが静かに途切れたあと。

遼河さんが、もう一度私の顔を見た。

「それで?」

「……何が?」

「まだある」

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