『十五年越しの願いは、歪んだ家族に砕かれて――身ごもり秘書は幼馴染CEOの重すぎる執着愛から逃げられない』
胸が。

一瞬ぎゅっと縮んだ。

「何で分かるの」

「分かる」

「顔?」

「ああ」

「そんなに出てる?」

「かなり」

思わず額へ手を当てた。

「……最悪」

「俺に隠す必要があるのか?」

その一言に。

胸が少しだけ痛んだ。

そう。

本当は最初から。

隠したかったわけじゃない。

ただ。

怖かっただけだ。

私はバッグへ手を伸ばし。

中に入れていた封筒を取り出した。

その瞬間。

手がわずかに震えた。

遼河さんは何も言わず。

ただ、私の手元を見ている。

「遼河さん」

「何だ」

「今日ね……病院にも行ったの」

表情が瞬時に変わった。

「病院?」

身体ごとこちらへ向く。

「どこが悪い」

「待って。違う。病気じゃないから」

「じゃあ何だ」

声が少し低くなる。

本気で心配しているのが分かった。

その顔を見て。

胸の奥がまた温かくなる。

この人なら。

きっと、大丈夫。

それでも。

最後の一言だけは。

やっぱり少し怖かった。

封筒から。

エコー写真を取り出す。

少し迷って。

遼河さんへ差し出した。

「……これ」

遼河さんが受け取る。

最初は何なのか、分からなかったのだと思う。

じっと見る。

印字された文字へ目を移し。

もう一度。

小さな影を見る。

そして。

そのまま動かなくなった。

「……綾乃」

いつもより。

少し掠れた声だった。

「これ……」

私はそっと。

自分のお腹へ手を置いた。

「赤ちゃん」

< 121 / 162 >

この作品をシェア

pagetop