『十五年越しの願いは、歪んだ家族に砕かれて――身ごもり秘書は幼馴染CEOの重すぎる執着愛から逃げられない』
遼河さんが、ゆっくり顔を上げる。

目が合った。

「今日、ちゃんと診てもらったの。八週くらいだって。大きさも一・五センチくらいで……とっても順調ですって」

遼河さんは。

何も言わない。

私と写真を、何度も見比べている。

「これが……?」

「うん」

「赤ちゃん?」

「うん」

「俺たちの?」

その聞き方が。

妙に幼く聞こえた。

泣きそうなのに。

少し笑ってしまう。

「うん。遼河さんと私の子」

その瞬間。

遼河さんの表情が、ほんの少し崩れた。

驚いている。

嬉しい。

でも。

まだ信じられない。

いろんな感情が一度に顔へ出ている。

こんな遼河さんを見るのは。

初めてだった。

「今日ね」

私は少しだけ身体を寄せた。

「動いてたの」

「……何が」

「心臓」

遼河さんの指先が。

写真の端で止まった。

「先生がね、“これが赤ちゃん。可愛いでしょう”って」

病院で見た画面が。

また鮮明に蘇る。

「小さな身体の真ん中で、一生懸命ピコピコ動いてて……“元気に育ってくれてますよ”って言われた」

話しているうちに。

目の奥がまた熱くなった。

「私ね。昨日までは検査薬だけだったから……いるかもしれないって思ってただけだったの」

一度。

息を吸う。

「でも今日、ちゃんと見たら。本当にいるんだって。生きてるんだって思ったら……」

そこから先は。

上手く言葉にならなかった。

でも。

遼河さんには伝わったらしい。

写真を持つ手が。

わずかに震えた。

「……見たかった」

ぽつりと呟く。

「え?」

「それ」

写真へ目を落としたまま。

もう一度言った。

「俺も見たかった」

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