『十五年越しの願いは、歪んだ家族に砕かれて――身ごもり秘書は幼馴染CEOの重すぎる執着愛から逃げられない』

第十四話――退治の時間です。すべての因縁、その残酷な結末――

午後二時。

KSサイエンス本社、最上階。

普段は役員会議に使われている大会議室には、大きな窓から午後の陽射しが差し込み、磨かれた長机の上へ淡い光を落としていた。

窓の向こうには、澄んだ青空と東京のビル群が広がっている。

いつもと変わらない景色だった。

けれど、その穏やかさとは裏腹に、室内には息を詰めるような緊張が張りつめていた。

私は遼河さんの隣に座り、膝の上でそっと指を組んだ。

大丈夫。

何度そう言い聞かせても、指先に入った力は抜けない。

ここへ来る前、遼河さんは何度も私に言った。

無理をするな。

気分が悪くなったら、すぐに言え。

途中で出ても構わない。

そして最後には――。

『俺がいる』

それだけ言った。

今も、長机の下で私の手に触れている彼の指が、その言葉を繰り返しているようだった。

私は小さく息を吐いて、正面へ視線を戻した。

そこには父――鷹宮宏輝がいる。

その少し離れた場所には、早紀子。

蘭。

河崎直政。

河崎志織。

そして、長谷川仁。

それぞれが違う表情を浮かべている。

苛立ち。

警戒。

不快感。

それから――何が始まるのか理解できていない者の、薄い余裕。

少なくとも。

まだ、この人たちは知らない。

今日、この部屋で何を突きつけられるのか。

父がゆっくりと立ち上がった。

室内の空気が、一瞬で変わる。

「本日はお集まりいただき、ありがとうございます」

静かな声だった。

怒鳴っているわけでもない。

威圧しているわけでもない。

それなのに、誰一人として口を挟めなかった。

「これより、KSサイエンス現体制における最後の取締役会を始めます」

最後の――。

その言葉に、何人かが顔を上げた。

早紀子の眉がわずかに動く。

「どういう意味ですか」

父は答えなかった。

机の上に両手を置き、ゆっくりと全員を見渡した。

そして最後に、一瞬だけ私を見た。

「今日ここへ来てもらったのは、確認してもらうためだ」

低く、静かな声が室内へ落ちる。

「長い年月にわたって、鷹宮家で何が起きていたのか」

父の視線が、早紀子へ向く。

「KSサイエンスを含む複数の企業で何が行われていたのか」

次に、直政。

志織。

長谷川。

蘭。

一人ずつ。

逃がさないように。

「そして今日で――」

父が一度、言葉を切った。

「全部、終わらせる」

< 127 / 162 >

この作品をシェア

pagetop