『十五年越しの願いは、歪んだ家族に砕かれて――身ごもり秘書は幼馴染CEOの重すぎる執着愛から逃げられない』
室内がざわついた。

慎二が画面を切り替える。

「まず、武村興業」

蘭の肩が跳ねた。

「複数年度にわたる資金の不正流用。架空経費。関連会社を経由した資金移動」

「知らない!」

蘭が声を上げる。

「私、そんなの知らない!」

慎二は冷静だった。

「蘭姉さん名義の承認記録があります」

「勝手に使われたのよ!」

「生体認証まで?」

蘭が黙った。

「端末ログも位置情報もあります。その時間、その端末を操作してたのは蘭姉さん本人です」

「違う!」

「じゃあ説明して」

慎二が蘭を見た。

「ここにある一件じゃない。何十件もある」

蘭の顔から血の気が引いていく。

私の胸が痛まなかったわけではない。

同じ家で育った。

妹だと思っていた。

嫌われていることを知っていても。

成人式の日。

あの振袖を引き裂かれた時でさえ。

どうして。

そう思っていた。

どうして、こんなに私を憎むのだろう。

ずっと。

その答えを探していた。

でも――。

今はもう、それだけじゃない。

「次」

慎二が画面を変えた。

「鷹宮家に対する武村側の介入」

早紀子が立ち上がった。

「やめなさい!」

父は動かなかった。

ただ、早紀子を見ていた。

慎二も止めない。

「資産情報の取得。人事への介入。取引先への接触。内部情報の持ち出し」

資料が次々と映し出される。

「最終目的は、鷹宮グループの経営権と資産への段階的介入」

私の喉が乾いた。

知っていたはずなのに。

文字として。

証拠として。

目の前に並べられると息が苦しくなる。

「そして」

慎二が一瞬だけ私を見た。

私は小さく頷いた。

大丈夫。

続けて。

「綾乃姉ちゃんを、鷹宮家から排除する計画」

遼河さんの手に力が入った。

成人式。

二十一歳の誕生日。

渡米。

私が日本から消えた理由。

何もかも。

偶然じゃなかった。

「違う!」

早紀子が叫んだ。

「私はあの子のためを思って――!」

「黙れ」

父の声だった。

初めてだった。

今日ここへ来て。

父が、あんな声を出したのは。

早紀子が息を止める。

父は立っていない。

怒鳴ってもいない。

ただ。

顔を上げて早紀子を見ていた。

「その言葉だけは、二度と使うな」

胸が詰まった。

「綾乃のためだったことなど、一度もない」

早紀子の唇が震える。

「宏輝さん……」

「私は十五年前、娘を守れなかった」

父はゆっくりと言った。

「そして五年前、本当にいなくなるまで、何も分かっていなかった」

私は膝の上へ視線を落とした。

父の声が続く。

「知らなかったでは済まされない。夫としても、父親としても、私の責任だ」

「お父さん……」

「だが」

父は早紀子を見据えた。

「だからといって、お前たちがしたことが消えるわけではない」

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