『十五年越しの願いは、歪んだ家族に砕かれて――身ごもり秘書は幼馴染CEOの重すぎる執着愛から逃げられない』
直政は何も言わなかった。

早紀子も。

蘭も。

私は思った。

こんな紙一枚で。

人生が変わる。

いいえ。

違う。

紙が人生を変えたんじゃない。

ずっと隠されていた事実が。

ようやく姿を現しただけだ。

「まだあるよ」

慎二が言った。

長谷川の顔が険しくなる。

「河崎志織と長谷川仁」

画面が切り替わる。

複数の通信記録。

面会履歴。

資金移動。

「政治ルートからの情報提供と、それに対する利益供与」

「でたらめだ!」

長谷川が立ち上がる。

「こんなもの――!」

「原本があります」

今度は別の声だった。

扉が開く。

私は振り向き。

目を見開いた。

「……ママ」

母――真悠子が立っていた。

その隣には、トーマス。

二人とも、いつもの穏やかな顔ではない。

母はまっすぐ私を見た。

そして、少しだけ微笑んだ。

「遅くなってごめんなさい」

「どうして……」

「この子に何が起きていたのか」

母の視線が早紀子たちへ向く。

「最後まで見届けに来たの」

胸がいっぱいになった。

トーマスがジュリアンへ一冊のファイルを渡した。

二人は短く英語を交わす。

ジュリアンが中身を確認し、頷いた。

トーマスが日本語で言った。

「海外側の資金移動は、こちらで追跡しました」

長谷川の顔色が変わる。

「複数国を経由しています。しかし、金は消えません」

トーマスは静かだった。

だからこそ、その言葉は重かった。

「会社を変えても。口座を変えても。名義を変えても。記録は残る」

ジュリアンが資料をモニターへ表示する。

海外送金の記録。

契約書。

実質的支配者の情報。

国内資料だけでは見えなかった線が、完全に繋がった。

「これで」

ジュリアンが長谷川を見る。

「国外分も揃いました」

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