『十五年越しの願いは、歪んだ家族に砕かれて――身ごもり秘書は幼馴染CEOの重すぎる執着愛から逃げられない』
二週間と少し。

事件についても、少しずつ動きが出ている。

あれほどの証拠が揃っていた以上、何も起こらないはずがない。

事情聴取。

捜査。

関係先への確認。

会社側の処理。

次々と進んでいることだけは聞いていた。

けれど。

父は詳しいことを電話では話さなかった。

だから今日呼ばれたのも、おそらく。

ある程度、先の見通しが立ったからなのだろう。

そう考えているうちに。

見慣れた住宅街へ車が入った。

「あ」

懐かしい塀が見えてくる。

鷹宮の家。

かつては。

帰ることが怖かった場所。

自分の居場所などないと思っていた場所。

門が近づくにつれ、身体が勝手に強張った時期もあった。

けれど今は。

不思議なくらい、胸が静かだった。

遼河さんが車をゆっくりと敷地へ入れる。

エンジンが止まった。

私はシートベルトを外しながら、隣を見る。

「ねえ」

「何だ」

「今日、何だと思う?」

「知らない」

「絶対何かあるよね」

「あるだろうな」

「何でそんな冷静なの」

「慣れた」

「何に?」

遼河さんが車のドアへ手を掛ける。

そして、ごく当然のように言った。

「お前の周りで突然何か起こることに」

「……失礼じゃない?」

「事実だ」

むっとしながら車を降りる。

その時。

玄関の扉が開いた。

出てきたのは、慎二だった。

「姉さん、遅い」

「まだ約束の十分前だけど」

「もう全員いるよ」

「全員?」

嫌な予感がした。

遼河さんと顔を見合わせる。

「慎ちゃん」

「何?」

「全員って……誰?」

慎二は少しだけ笑った。

その笑い方。

絶対に何か知っている。

「入れば分かる」

「ちょっと待って」

父と同じこと言わないで。

そう言おうとしたところで、慎二はさっさと玄関の中へ戻っていった。

「慎ちゃん!」

返事はない。

私は玄関を見上げた。

隣では遼河さんが、すでに諦めたような顔をしている。

「……帰る?」

「無理だろ」

「だよね」

小さく息を吐く。

晴天。

雲ひとつない空。

なのに。

なぜだろう。

こういう日に限って。

とんでもないものが落ちてくる気がする。

――まさに。

青天の霹靂。

そんな予感を抱えながら。

私は遼河さんと並んで、鷹宮家の玄関をくぐった。

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