『十五年越しの願いは、歪んだ家族に砕かれて――身ごもり秘書は幼馴染CEOの重すぎる執着愛から逃げられない』
私は一度、大きく息を吐いた。
「……で?」
全員の視線が私へ集まる。
「で、って?」
慎二が聞く。
「今日の話、これで終わり?」
一瞬。
室内が妙に静かになった。
「……何?」
嫌な予感。
まただ。
私は隣の遼河さんを見る。
遼河さんも僅かに眉を寄せている。
ということは。
遼河さんも知らない。
――もっと嫌な予感。
父が、今度は別のファイルを開いた。
さっきまでとは明らかに違う。
表紙の色まで妙に明るい。
何これ。
私は目を細める。
「次は」
父が言った。
「お前たちの結婚についてだ」
「……はい?」
遼河さんまで僅かに身体を動かした。
ジュリアンが口元を押さえる。
慎二はすでに笑っている。
「ちょっと待って」
私は父を見る。
「結婚って、もう入籍したよ?」
「ああ」
「じゃあ何?」
「式だ」
「……式?」
「結婚式」
分かってる。
言葉の意味は分かってる。
「それを今から決めるの?」
「今決めなくて、いつ決める」
「私たちで決めるんじゃないの?」
父が当然のように答えた。
「だから、お前たちも呼んだ」
――も。
今。
確実に「も」って言った。
「待って」
私は室内を見回した。
父。
母。
トーマス。
慎二。
充さん。
真崎さん。
ジュリアン。
私。
遼河さん。
「この人数で決めるの?」
「そうだけど?」
慎二が平然としている。
「何で慎ちゃんまで!」
「家族だから」
「真崎さんは!?」
突然振られた真崎さんが目を丸くする。
「俺?」
「何でいるの?」
「慎二に呼ばれました」
私は慎二を見る。
「慎ちゃん」
「だって師匠、一人だけ仲間外れ可哀想じゃん」
「誰が師匠だ」
「ほら」
「ほら、じゃない」
その横でジュリアンが資料を一枚取り出した。
「ちなみに会場候補は、すでにいくつかあります」
「何で!?」
「仕事が早いので」
「そういう問題じゃない!」
母までバッグから何かを取り出した。
「ドレスもね、候補だけ見てきたの」
「お母様まで!?」
「妊娠してるんだから、時期は考えないと駄目でしょう?」
「そうだけど!」
トーマスも楽しそうにタブレットを開く。
「Honeymoon」
「待って、旅行まで!?」
「Before baby or after baby」
「まだそこまで考えてない!」
右から。
左から。
次々と話が飛んでくる。
結婚式。
ドレス。
式場。
披露宴。
新婚旅行。
仕事。
産休。
出産。
私は本気で両手で頭を抱えたくなった。
「ちょっと待って! 一個ずつ!」
その時。
今まで黙っていた遼河さんが口を開いた。
「新居についてですが」
私は勢いよく隣を見る。
「遼河さんまで何かあるの!?」
「ある」
即答だった。
嫌な予感しかしない。
「今のマンションでは、子どもが生まれたあとのことまで考えると少し狭い」
「まあ、それは話したよね」
「ああ」
「だから新居を探すんでしょう?」
「いや」
「……いや?」
遼河さんは、なぜか父へ視線を向けた。
父が何でもないことのように頷く。
……何。
その無言のやり取り。
ものすごく嫌な予感がする。
「遼河さん?」
「この家を全面的にリフォームする」
「……」
私は一度、目の前のリビングを見回した。
そして遼河さんを見る。
「この家って……」
「ああ」
遼河さんは平然と答えた。
「鷹宮の家だ」
「ちょっと待って」
今度は父を見る。
「お父様、知ってたの?」
「ああ」
「何で!?」
「遼河君から相談を受けた」
「相談!?」
遼河さんが淡々と付け加える。
「お義父さんからは、もう許可をいただいている」
「許可もらってるの!?」
「ああ」
「私に聞く前に!?」
「順番として、まず所有者の許可が必要だろう」
「そういう問題!?」
正論っぽく言われると余計に腹が立つ。
「じゃあ何? ここを全部?」
「全部だ」
「全面リフォーム?」
「ああ」
「いつ決めたの!?」
「少し前から考えていた」
「聞いてないんだけど――!?」
私の声が。
これから全面リフォームされるらしい鷹宮家のリビングいっぱいに響いた。
「……で?」
全員の視線が私へ集まる。
「で、って?」
慎二が聞く。
「今日の話、これで終わり?」
一瞬。
室内が妙に静かになった。
「……何?」
嫌な予感。
まただ。
私は隣の遼河さんを見る。
遼河さんも僅かに眉を寄せている。
ということは。
遼河さんも知らない。
――もっと嫌な予感。
父が、今度は別のファイルを開いた。
さっきまでとは明らかに違う。
表紙の色まで妙に明るい。
何これ。
私は目を細める。
「次は」
父が言った。
「お前たちの結婚についてだ」
「……はい?」
遼河さんまで僅かに身体を動かした。
ジュリアンが口元を押さえる。
慎二はすでに笑っている。
「ちょっと待って」
私は父を見る。
「結婚って、もう入籍したよ?」
「ああ」
「じゃあ何?」
「式だ」
「……式?」
「結婚式」
分かってる。
言葉の意味は分かってる。
「それを今から決めるの?」
「今決めなくて、いつ決める」
「私たちで決めるんじゃないの?」
父が当然のように答えた。
「だから、お前たちも呼んだ」
――も。
今。
確実に「も」って言った。
「待って」
私は室内を見回した。
父。
母。
トーマス。
慎二。
充さん。
真崎さん。
ジュリアン。
私。
遼河さん。
「この人数で決めるの?」
「そうだけど?」
慎二が平然としている。
「何で慎ちゃんまで!」
「家族だから」
「真崎さんは!?」
突然振られた真崎さんが目を丸くする。
「俺?」
「何でいるの?」
「慎二に呼ばれました」
私は慎二を見る。
「慎ちゃん」
「だって師匠、一人だけ仲間外れ可哀想じゃん」
「誰が師匠だ」
「ほら」
「ほら、じゃない」
その横でジュリアンが資料を一枚取り出した。
「ちなみに会場候補は、すでにいくつかあります」
「何で!?」
「仕事が早いので」
「そういう問題じゃない!」
母までバッグから何かを取り出した。
「ドレスもね、候補だけ見てきたの」
「お母様まで!?」
「妊娠してるんだから、時期は考えないと駄目でしょう?」
「そうだけど!」
トーマスも楽しそうにタブレットを開く。
「Honeymoon」
「待って、旅行まで!?」
「Before baby or after baby」
「まだそこまで考えてない!」
右から。
左から。
次々と話が飛んでくる。
結婚式。
ドレス。
式場。
披露宴。
新婚旅行。
仕事。
産休。
出産。
私は本気で両手で頭を抱えたくなった。
「ちょっと待って! 一個ずつ!」
その時。
今まで黙っていた遼河さんが口を開いた。
「新居についてですが」
私は勢いよく隣を見る。
「遼河さんまで何かあるの!?」
「ある」
即答だった。
嫌な予感しかしない。
「今のマンションでは、子どもが生まれたあとのことまで考えると少し狭い」
「まあ、それは話したよね」
「ああ」
「だから新居を探すんでしょう?」
「いや」
「……いや?」
遼河さんは、なぜか父へ視線を向けた。
父が何でもないことのように頷く。
……何。
その無言のやり取り。
ものすごく嫌な予感がする。
「遼河さん?」
「この家を全面的にリフォームする」
「……」
私は一度、目の前のリビングを見回した。
そして遼河さんを見る。
「この家って……」
「ああ」
遼河さんは平然と答えた。
「鷹宮の家だ」
「ちょっと待って」
今度は父を見る。
「お父様、知ってたの?」
「ああ」
「何で!?」
「遼河君から相談を受けた」
「相談!?」
遼河さんが淡々と付け加える。
「お義父さんからは、もう許可をいただいている」
「許可もらってるの!?」
「ああ」
「私に聞く前に!?」
「順番として、まず所有者の許可が必要だろう」
「そういう問題!?」
正論っぽく言われると余計に腹が立つ。
「じゃあ何? ここを全部?」
「全部だ」
「全面リフォーム?」
「ああ」
「いつ決めたの!?」
「少し前から考えていた」
「聞いてないんだけど――!?」
私の声が。
これから全面リフォームされるらしい鷹宮家のリビングいっぱいに響いた。